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討ち果て倒れる者


 目の前にいる爬虫類に近い巨大な魔物がこちらを睨み付ける様に迫ってくる。

 今まで…樹海で大きな魔物と戦うことは何度もあった。
 でも何度もあったとはいえ、緊張はする。気を抜いた瞬間、呆気なく負けて下手したら死ぬ。樹海や迷宮はそう甘くない世界であるのは嫌と言うほど知ってる。

 剣を握り、じわりと籠手の中で汗ばむのを感じた。

「ルイスは術が届く距離まで下がって、ハルニアは出来るだけ距離を取れ!」

 僕が言うと二人は頷き、魔物から離れていく。

「――武器を取り、掲げよ!」

 攻撃の号令を掛けると同時に、少し離れた所にいたカノンが刀で魔物を切り付ける。それからルイスの印術の雷が飛ぶ。

 魔物は攻撃を鬱陶しく思ったのか、巨体を捻りぐるりと尾を武器にしで回転させてくる。幸い距離を取ったルイスやハルニアには当たらずに済んだが、すぐ近くにいた僕とカノンは攻撃をまともに受けてしまった。

 お互い何とか踏みとどまるが、思ったよりダメージが大きい。後衛職の二人には一溜まりもないだろう。

「――身構えて!」

 今度は防御の号令を掛ける。これで暫くの間、防御が上がるはずだ。こういう時、ファランクスやパラディンといった盾職の力が羨ましい。特に僕は嘗て、仲間を身を挺して守るファランクスをやった事があるから尚更だ。

 確かに今、盾を装備しているとはいえ…ファランクスを兼任していた頃の感覚が鈍ってきている状態で仲間を庇おうとしても…きっと庇いきれない。それでも…どこか悔しがる自分がいた。

 するとカノンが不意に声を掛けて来た。

「…クオン、今は前を見ろ」

 笠を上げながらカノンが僕を見た。相変わらず、射抜くような視線だ。

 だけど…目は覚めた。…少し考え過ぎた。

 それを察したのか彼女はフッと笑った。

「…相変わらずだな…だけど、それが命取りにもなりかねないんだぞ。気を付けろ」

 刀を構え直して大きく降り被り、斬撃を与える。魔物は大きく身を反らせ、カノンを睨み付けた。…今のは封印切か。うまく封じが出来たみたいだが…まだ油断は出来ない。

 再び魔物の横面にルイスの印術が見事に当たる。少しずつだけども、相手を追い詰めているのは間違いない…筈だ。



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