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呼び名


 その一言を聞き、私とカイザーは固まり、タルトはおろおろし始め、リュートは嬉しそうにクオンの手をガシッと掴んだ。

「ありがと~っ!ほんっとありがと~!」

「え…、え? ああ…うん。」

 イマイチよくわからなかったのか、クオンは曖昧な返事をしながら苦笑した。

「いいのかよ…本当に…」

 復活したカイザーがまじまじとクオンを見ながら言い、おろおろしながらもタルトも何度も頷く。カイザーはチラリと私を見、「お前はどうなんだよ」と視線で問い掛けてきた。

「…まぁ……な。カイザーやタルトの言う通りだとは思う。でも……」

「でも?」

 一度目を閉じ、私は嘗ての……家が襲撃される前の事を思い出した。

「……王子だったクオンには…あだ名とかいった事は“憧れ”だったんじゃないか?」

 その一言にクオンやカイザー達が目を丸くした。そしてクオンは小さく頷いた。

 …ギルドを結成し、軽い自己紹介をしあった時。

 クオンは王位継承と国のいざこざに嫌気が差したから逃げ出して来たと(ある意味爆弾発言でもあったが…)言った。でもその後に……


『それと……以前から気になっていた“世界”を自分の目で…自分自身で見て、体験してみたかったんだ。』


 一国の王子という肩書きに縛られ、他の人と比べて自由が限られていたのだろうか。或いはクオン自身の好奇心か……
 どのみち王子だった事が原因で、自由に外に出ることは出来なかった筈だ。
 出来たとしても、護衛に守られながら安全な場所くらいしかなかったのだろう。


 だから国を出た。それなりの覚悟はある筈だ。期待と…同じくらいに。

「私は……いいと思うぞ。」

 私も…ショーグンだった頃はそうだった。だから……気持ちはわからなくない。

 自由に仲間と冒険して、名前を呼び合うなど………"嘗ての自分がいた所"では出来なかっただろうから。

「カノン……」

 カイザーは腑に落ちないと言いたげにしていたが、やがて溜め息を吐き…頷いた。

「えと……いいんですか…?」

 控えめにタルトが聞き、カイザーは「ああ」と頷いた。彼女もまた、すぐに納得出来なかったのか、暫く眉をひそめていたが頷いた。

「……ありがとう」

 少し小さな声だったが、クオンは微笑みながらそう言った。





























「……で、リュート。一体どういうあだ名を考えたんだ?」

「ふっふっふー…それはね~」

 含み笑いをしながらリュートが腕を組む。そしてバッと手を挙げた。

「アタシが考えたクオンのあだ名はー…――――」


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