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未だその傷は癒えずⅢ


「…というと?」

「復讐を果たしても、その後に残ったのが空虚、なんてこともあるだろうさ。何かを失ったが故に復讐をする、というのなら尚更だ。」

「空虚……」

「復讐を目的にしていたらそうなるだろうよ。…まぁ、その辺りも人によるだろうけどな。幸い、俺には世界樹の迷宮を踏破する、という目標が残っていたのと、“約束”を守るのに必死だったから、そういう感情はなかったけど…」

 実際はそれ以外にも色々あったけどな、と苦笑した。

 でも確かに、復讐を目的にしていて、それを果たしてしまえば、その後の感情が空虚のはなんとなく想像はつく。

 先程言っていた、復讐心を炎に例えるという物と使えばわかるだろう。復讐を果たしたことにより、その炎は消えてしまうのだから。炎が消えた後、何が残るのかはその人次第になるのだろうけれど……。

「……ん~…難しいなぁ」

「そ。難しいんだよ、復讐っていうのは」

 だからこそ、簡単な言葉で止めないでほしいのさ、と言って、オレの頭をポンポンと撫でられる。

 それを見て、ずっと黙って聞いていたハルニアが口を開いた。

「…ふぅん。そんな風に考えてたんですね」

「ハルニア、」

「別に、何も言いませんし止めません。エルディアさんにも…まあどうせ言ってるんでしょう?これ以上は言いません」

 ハルニアはこちらに背を向けたまま、そう言う。
 この位置ではオレもトキワさんも、彼女がどんな表情をしているのかはわからない。

「……」

 けれど、トキワさんは黙ってそれを聞いていた。

「アナタにとっての復讐とは、敵討ちであり、あの弔い合戦だった。ただそれだけ。…そうでしょう?」

「ああ」

「それが、さっきの冒険者の言ってたことが、境遇が、過去の自分に重なって見えてしまった。…なら、どうしたいかはわかってますよ」

 そう言って、彼女は振り返る。

 ハルニアの表情は、ニッと笑っていた。

「やってやろーじゃないですか。そうでしょう?」

 それに一瞬驚いた。一度トキワさんと目を見合わせたが、すぐにその表情は崩れ、彼女と同じ表情になった。

「おうよ。それに、あの冒険者にはまだ待ってる人がいるんだ。その人の為にも、生きて連れ帰らないとな」


 未だその傷は癒えずⅢ


 

 この仇討ちで彼の心が晴れるのかは彼次第。


 ならその“復讐”に手を貸そうじゃないか。


 
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