未だその傷は癒えずⅢ
◇
…そんな話をしていた所為なのか、それとも。
「ボロボロの鞄、か」
少し面倒な魔物がいた、ということで一度帰り、事情を話してエーレ達のパーティにも協力してもらい、その魔物を倒し終え、扉の前に来た時のことだった。
傷だらけの鞄を持ち上げながら、オルフィが眉を顰めた。
「ここまでボロボロになるとな…さすがに絶望的だろうな」
「………っ」
思わず服の裾をぎゅっと掴む。なんだろう、この気持ちは。
悔しいような、怖いような。やるせない…そんな感情。
「もしかしたら、この先にいるのかも……っと?」
「どうしたの、ルネア」
扉を開けようとしたルネアが固まり、ミゾレさんが首を傾げながら聞くと、苦笑しながら振り返った。
「ん~…なんか鍵掛かってるっぽい」
「…マジで?」
「マジマジ。ほら」
そう言ってミゾレにも扉を開けるように促す。彼女も開けようとするが…ルネアの言う通り、扉は開かない。
「本当だ、開かないわね」
「…いっそぶっ壊すか?」
「「ちょっ…それはやめて!?」」
シノの提案に思わずオレとミゾレさんが同時にツッコミを入れた。…どうしてそんな過激思想が出てくるのかなぁ!?
「壊すのはナシか…チッ」
「ふーん…それは残念」
「……前から思ってたけど、イベル、ガルデ。お前らも絶対この世界に来てはっちゃけてるだろ!?」
まさかのイベルとガルデも似たようなことを考えていたらしい。さすがにルネアもツッコミを入れていた。
「これ以上は行けそうにない、か。この鞄は一旦持ち帰って依頼人に見せようか」
「…それもそうだな」
そうしてオレ達は一度マギニアへ戻ることにした。
◇
結論から言うと、鞄を見せたら案の定というか、依頼人はショックを受けていた。けれど…鞄の中から鍵が出てきて、もしかしたら、という可能性が出てきた。
それを聞いて、オレは気持ちが少しだけ軽くなった…ような気がする。
「それじゃ、もう一回行くことになるけど…エーレ達にもう一度頼んでもいい?」
「別にいいけど…」
苦笑しながらエーレは同意してくれた。が、オルフィは用事があるということで今はパーティにいないらしい。代わりのメンバーはどうするか、と考えているとハルニアが誰かに気付いたらしく、「おーい」と手を振った。
誰だろう、と思っているとやって来たのはトキワさんだった。
ハルニアが訳を話し、来てくれるかと交渉を始める。…話している間、何故かトキワさんとミゾレさんが静かに睨み合っていたのはあえて気にしないでおこう…←
「…成る程な…。丁度俺も手は空いてるから構わないぞ」
「よっし!これで私達のメンバーは5人になったぞー!いつでも行けるよ、ルネア!」
「りょーかいー!そんじゃ行きますよー!!」