黄金の翼


 発生した残像は、先程使った凍砕斬をもう一度繰り出し、消えていく。

「さて、これだけで終わると思うなよ?」

 いつの間にか、トキワは矢を天高く放っていたのだろう。戻ってきた矢が勢いよく魔物の翼を貫く。確かに大きなダメージにはなっているだろう。しかしまだ倒せるという程の一撃には至っていない。

「…ま。そう簡単にはいかないだろーさ。んじゃ、全員嫌でも俺の歌、聴いてもらうぜ?」

 クロードはそう言うと、周囲に響くような声量で歌を歌い始める。

「よっと…全体補助にしたのか。やるな、ボンボン!」

 一度着地したスイヨウがクロードを見てそう笑う。…ボンボンって、いや確かにクロードは(元)王族だから間違ってはいないだろうけど…!

「ボンボンってお前…!って、前前!!気を付けろぉぉぉ!」

 慌てたクロードの声でハッとし、前を見れば大きく翼をはためかそうとしている魔物の姿が見えた。

 さすがに防御が間に合わない…!そう思ったと同時に翼が振り下される。その瞬間、背後から強い冷気が飛んだ。どうやらイワオロペネレプの攻撃と同時に連星術を放ったらしい。
 それを感じた直後に全身に風の衝撃を受ける…が、なんとか耐えきった。

「決めます……っきゃあ!」

「タルト!」

 しかしその所為でタルトは攻撃を思いっきり食らってしまったようだ。派手に飛ばされ、地面に叩き付けられる。呻き声をあげて、なんとか起き上がろうとしているが、うまく動けないみたいだ。

「麻痺…!ご、ごめんなさい、うまく動けない…」

「く…!今すぐ回復を…」

 テリアカβを取り出し、タルトの回復に向かおうとする。だが、その一瞬を突くように魔物の鉤爪が迫っていた。

「うわぁっ!?」

 咄嗟で盾でガードするが、衝撃が強く、頭を強く殴られたような感覚を覚えた。

「エーレさん!…っぅ……!」

 タルトの方も痺れが取れないのか、うまく動けていない。

 このままだとマズイ、そう思い、焦りが生じる。

「くっそ…!やらせねえぞ、絶対に!」

 悪態を吐きながらトキワが二回矢を放つ。その一回はイワオロペネレプの脚を大きく傷つけ、その痛みによる悲鳴が上がった。

「チッ…!俺だって一応、占星術は使えるんだからな!」

 そう言ってクロードも氷の占星術を放つ。だがタルトの物と比べると明らかに威力が劣っているように見えた。

 マズい。この流れはさすがにマズい…。

「…やれやれ、お前らが動けねェのなら仕方がない。文句は言わせねぇぜ!?」

 だが臆せず動ける者がいた。

 
 ──スイヨウだ。

 
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