黄金の翼
一体どうしたのだろう。そう思っていると、トキワが声を上げた。
「流石に気付くよな…!今度から間違いなく攻撃が来るぞ!ちゃんと構えろ!」
彼の言う通り、黄金の翼を持つ魔物はこちらに殺気を向けていた。赤い目がこちらを睨むように輝いている。
それと見て、バッとスイヨウが顔を上げた。
「見損なったぜ、イワオロペネレプ」
静かに、そして低い声でそう言った。
「スイヨウ…?」
思わず名前を呼べば、ちらりと僕を一瞥した後、魔物を睨みつける。
「確かにお前はオレが望んだオリジナルじゃないだろうよ。けれど、限りなくオリジナルに近い。だから、実際に会ってみたかった。可能なら…話もな」
一歩前に出るスイヨウ。思わず止めようとすると、トキワに制される。何で止めるの、というように顔を見れば、彼は首を横に振った。
「モリビトの守護鳥なんだろう?なのに、何故それをしない。」
スイヨウはまた一歩踏み出す。
「何故彼らを傷付ける側に回っている?──貴様はその程度なのか、イワオロペネレプ!!」
もう一度顔を上げ、吼えた。
「貴様のプライドは、人間の呪術に屈する程脆弱なのか!?貴様に、本来の役目を守る意志は、あっけなく呪言で塗り替えられる程ちっぽけな物なのか!?そうでないというのなら、オレに──造られたオレに示してみろ!!」
そう叫んで跳躍…否、マントの部分を翼に戻し、イワオロペネレプに斬りかかった。
それに応えるように、魔物は大きく羽ばたき、咆哮を上げながら鉤爪を振り上げた。
「うおっ!?」
「ちょぉぉっ!?」
前列にいたトキワと後列にいたクロードを狙ったらしい。反応が遅れた二人は思いっきりその攻撃を食らう。だが、倒れるまでには至らないみたいだ。
「いってて…煽るなよスイヨウ!!」
「うるせぇ!楽しみだったことを思いっきりぶち壊されたんだ、これをキレないでいられるか!?」
「そりゃそうだろうな!お前メッチャ楽しみにしてたもんな!よし、その勢いでやっちまえ!!」
「言われずともやってやるさ!!食らいやがれ、凍砕斬!!」
頭を押さえながらトキワがスイヨウにツッコミを入れる。…ねえもしかして封じ入ってる?なのにツッコミ入れられる程の余裕持ちってなに!?←
しかもスイヨウはスイヨウで台無しにされたことでブチ切れているようだ。…でもこれ、元を辿れば全部ブロートの所為だからな!アイツに対する苛々と殺意は多分皆持ってるだろうな!
「では、主な原因であるブロートに追いつく為にもさっさと蹴散らしましょう!氷の連星術!」
エーテル圧縮でピンポイントを狙った氷の連星術がイワオロペネレプを襲う。一撃が妙に高いのは何で何だろう…。
「少年!声に出てたから教えてやろうか!それは俺がエーテルの輝きの補助をしたからだぜ!」
声に出てたかそっかー…と一瞬呆けたが、クロードのサブクラスを思い出すと納得した。
「…あ、サブクラスがゾディアックだから出来るんだな!?」
「そのとーりだ!お前にも掛けてやったぜ。だから行くんだ、勇者サマ!」
「ゆ、勇者って言うなー!俺はそんなつもり、ないんだからな!!」
クロードに茶化されながらも強化してくれたことには感謝しつつ、魔物に斬りかかる。と同時に、うまく残像が発生した。