黄金の翼
ハルニア達は、スイヨウの意志を尊重し、編成を新たに組み直した。
右側の方から入り、囮となるのがミゾレ、オルフィ、アクアの三人。
左側から入り、イワオロペネレプを討伐するメインのパーティの護衛兼第二の囮がリーナ、エルディア、ハルニアの三人。
そして…同じく左側から入り、イワオロペネレプと直接戦うメンバーが──
トキワ、クロード、タルト。そして僕と……スイヨウ。
「…よし、全員、死ぬなよ。」
絶対に生きて帰ってこいと、トキワが言うと、皆頷いた。
「死なせるわけないでしょ。向こうにはアクアちゃんがいるし、こっちには私がいるんで!」
ハルニアが鼓舞するように言い、目の前の扉を見据える。
そして…──
「いくぞっ!!」
勢いよく扉を開き、三方向にそれぞれ分かれた。
ミゾレ達が右側の方の扉に向かうのを横目で見ながら、僕達も左側の扉へ向かっていく。
もう一つの扉を開くと同時に、女性の姿をしている、この迷宮でよく見かけるFOEが二体見えた。
「こいつらはアタシ達に任せて!」
「全員守って見せる!だから行け!」
「死ぬなんて、私が許さねーですから!そっちも死ぬんじゃないよ!!」
「っ…頼んだ!」
即座にエルディア達がそのFOE達を引き付けて行き、戦い始める。
反対側がら僅かに銃声が聞こえる…。どうやらミゾレ達も交戦しているらしい!
「完全に気は向こうに行ってるわね。今がチャンスよ、行きなさい、【エスポワール】!」
「言われなくても!」
エンリーカが鼓舞のような声を上げ、それに弾かれるように僕達はイワオロペネレプに飛び掛かった。
まずはトキワが矢を放つ。オルフィと同じか、それ以上の素早さだ。
「思い出した!アイツの弱点は氷属性だ、タルト!!」
「りょ、了解です、クロードさん!」
「いい返事だ!それじゃ、お前ら、俺の歌を聞きやがれーっ!」
まさかの弱点を思い出す、ときた。まあありがたいけど…!
そう考えていると、クロードの歌が聞こえてきた。その歌を聞いていると、力が漲ってくるようだ。
「成る程、攻撃の号令か…!」
まさかそれを歌でアレンジするのはちょっとびっくりしたが…、ちゃんと効果があるのなら問題はないだろう。
「それじゃあ…喰らえ、凍砕斬!」
冷気を纏わせ、魔物に向かって斬りつける。
氷が一気に広がり、魔物を覆った。が、すぐにそれは砕け散った。
その一撃が効いたのだろう、魔物は大きく悲鳴のような鳴き声を上げた。…成る程、弱点というのは間違いないようだ!
スイヨウも同じスキルを使ったのだろう。冷気と氷が再び魔物を襲った。
…とここまで来てまた気付く。
やけに、スイヨウが大人しいことに。