黄金の翼
収まったと同時にトキワがスイヨウに近づき、頭を殴った。…殴った!?
「おいコラ!スイヨウ、仲間に手を挙げるなって言っただろ!」
「あ~~言ってたなァ坊ちゃん。」
「坊ちゃんって言うのやめろ!!俺もうそんな年じゃねえし!!」
やめろ、と言う声は若干震えてる。確かに年齢考えたら…仕方ないよな、うん←
「でも殺しちゃいねぇよ?どっちかと言えば試しただけさね。」
あっけらかんとスイヨウは答え、トキワはわなわなと震えながら言い返した。
「おまっ…お前…!それで全員警戒するレベルだたんだぞ!?やるな、というのがお前にとって難しいのは知ってるが、もう少し加減しろ加減を!!」
「うんうん…アタシの方からもそれはお願いしたいよ、スイヨウ」
エルディアが苦笑しながら言うと、スイヨウは彼女をじっと見つめ、ニヤリと笑みを浮かべた。
「ほほう…ま、これ以上相棒の胃痛を増やしてもアレだしなァ。いいぜ、トキワの未来の伴侶の言い分、呑んでやる!」
しかもドヤ顔しながら。
「要求を呑んでくれたのはいいけど余計な事言うんじゃねぇこの黄金霊鳥ーーーー!!」
余計な事まで言った所為か、トキワが顔を赤くしながら小太刀構えながらスイヨウに斬りかかった…が、軽くかわされる。
「ちょ、オイ!それオレの家みたいなモンなんだぞ!もっと大事に扱え馬鹿野郎!」
「うるせぇ!余計な事言った罰だと思えーー!!」
「くっそ…!大人げねェぞ!!」
…何故か二人…というか一人と一羽は喧嘩しだした。
それに慣れてる、と言わんばかりにエルディア達は放置していたが←
「ねぇ、アイツらいつもあんな感じなの?」
「あー…たまにああなっちゃうんですよ。だから気にしないで?」
初めてこの光景を目にするエンリーカが問いかけてきたが、苦笑しながらハルニアが答えていた。
…確かにたまにこういう光景見るけど、まさか迷宮の中でもやるなんて、何なんだコイツらは…。
「なんというか、こんなこともあるのだな」
少し表情を強張らせたマキリが、先の一人と一羽を見詰めながらそう呟く。
「? 何がだ?」
オルフィが問うと、マキリは一度彼を見、そして喧嘩している一人と一羽に視線を投げながら答えた。
「あの人間、イワオロペネレプなのだろう?こうして人間と共にいるということが……あまりにも予想外だったものでな…」
「あー…確かにイワオロペネレプだけど、多分アンタが知ってるやつとは大きく違うと思うな。アイツ、タルシスの方のイワォロペネレプはどうやら人工的に作られたっぽいから…」
タルシスの方で色々あって、今のようになった、とオルフィが説明すると、マキリは目を見い開き、「そのようなことが…」と驚いた様子でいた。
…ん?待てよ?
「ねぇマキリ、なんでスイヨウの正体を知っているんだ?」
スイヨウの正体。それは先程オルフィやマキリが口にしていた「イワォロペネレプ」という黄金霊鳥の魔物。何度かその姿をしていたこともあった為、知っていたのだけれども…。
「それはだな…「いるんだろ、イワオロペネレプが」…その通りだ」
マキリの答えを遮ったのは──その魔物であるスイヨウ本人だった。