未だその傷は癒えずⅡ
──小迷宮 御神ガ原
何処となく碧照ノ樹海と似た感じの小迷宮だ。
今の俺達のメンバーはパラディンのリーナ、プリンスのクロード、ハイランダーのエルディア、ミスティックのアクア、そしてレンジャーの俺だ。
エーレ達から予めこの小迷宮の地図を書いて貰っていたので、どの辺に行けばいいのかはすぐにわかった。
改めてエーレ達にそれを確認し、ついさっき分かれた所だ。
「とはいえ、このメンバーで大丈夫なのかよ…」
「むっ、クロード。それは私の盾に文句でも?」
「いやそう言う意味で言ったんじゃなくて!コイツだよコイツ!」
そう言ってクロードは俺を指さした。
「人を指さすのはよくないぞー、クロード。…ああでも、君が何を言いたいのかは…察したけどね」
リーナの表情が曇る。…ああ、成る程。
「あんたらも、あの時の事気にしてんのか?しかも、丁度魔物もほぼ同じ、っていう…」
俺がそう言えば、二人の表情はさらに暗くなる。その二人を見て、以前俺が語った事を思い出したのだろう、エルディア達の表情も暗くなった。
「…なぁに、俺は大丈夫だ。それに──」
その先に続く言葉が詰まる。「俺は変わった」は違う気がする。「皆を守る」…これだと“演じて”いた頃の俺と同じだ。
何だろう、俺は何を言えばいいんだ……?
悩んでいると、衛兵に話しかけられているエルディア達の姿が見えた。
「エーレさん達から話しは聞いています。それでは、お願いしますね」
二言三言程度話して、すぐに別れる。そういえば、エーレ曰く、扉の先にスノードリフトらしき大きな狼の姿を確認したらしい。
一度そいつと戦った事のある俺達にそれを任せ、周りにいるFOEの方はエーレ達や衛兵がやるということになっている。恐らくだが、先程の会話の内容はそういうことだろう。
「…準備はいいか?」
自分の盾を確認し、こちらを振り返えったリーナがそう訊く。
クロードは軽口を叩きながら返す。
アクアも少しどもりながら大丈夫と言う。
エルディアがこちらを見る。青い目が、俺を見て、いる。
──あぁ、そんな目で俺を、今の醜い俺を、見ないでくれ……
思わず、帽子を目深に被り直し、その視線をシャットアウトする。
「あの、トキワさ、」
「俺も問題ないさ」
彼女の声を遮るように、言葉を紡ぐ。
「……あ、えと、アタシも大丈夫です」
少し戸惑ったエルディアの声。それから少し遅れてからリーナが「そうか」と返すのが聞こえた。
「それじゃ、行くぞ。何度目かの狼討伐だ」
その声を聞き、帽子を少し上げる。
そして、扉が開かれた。