未だその傷は癒えずⅠ
そろそろ疲れてきたかもしれない。周りの仲間にも、疲労の色が見える。それをエーレに言うと、彼は頷いて他の仲間にも休憩することを伝えていく。
「少し、休憩しましょうか」
ミゾレがそう言うと、シリカが「やったー!休めるー!」と嬉しそうに声をあげた。
何人かが空いた所に座り、休憩を始める。その中、タルトが少し先の方へ行き、周囲の警戒をしていた。それに気づいたオルフィが彼女に話しかける。
「周りの警戒は私がしておきますね」
「ああ。でもちゃんと交代したらタルトも休めよ?」
「わ、わかってますよ!」
そう言って、タルトは周りへ注意を向ける。邪魔をしない様にとオルフィもこちらに戻ってきた。
「夜賊にしちゃぁ優しすぎやしませんかね、オルフィさんや」
「ほっとけ。性分なんだよ」
「あだっ」
軽口を叩けば、オルフィにデコピンを食らった。…くそう、やるなこのナイトシーカー←
地味に痛む額を擦りながら、なんとなく周りを見渡す。
前衛組のエーレ、オルフィは何やら座りながら相談をしている。ミゾレはシリカと話している……若干ミゾレが引いてるように見えるのは気のせいだろう、多分。
タルトは哨戒中だからいいとして…レオは何処だろうと思い、もう少し探してみると……
(いた)
案の定、みんなから少し離れた所で休んでいた。
溜め息を吐きながら、私は彼の方に向かっていく。ある程度近づくと、私の気配に気づいたのだろう、顔を上げた。
「…なに」
「隣、いいかな。」
「別に……」
「それじゃー失礼しますねー」
拒否をしなくなった、という辺り、少しは打ち解けられたのだろうか。そう考えながらレオの隣に座った。
…座ったのはいいのだが、少し重い空気が漂う。というか、会話がない。
(うぉぉ…こういうの苦手なんだよ、私ーーー!)
何か話題がないか、と色々思考を巡らせる。
そしてふと、思い出したのが
「ああ、エトリア…」
「それが何?」
「あー、その。私も昔、エトリアにいたことがあってねー。ちょっと思い出したんだ」
私がエトリアの冒険者であった、と告げるとレオは少し目を見開いた。
「君もエトリアの冒険者だったのか…」
「そうだよー。でも、世界樹を踏破した後、少ししたらハイ・ラガードの方に行ったんだけどね。」
「ああ…どうりで。会ったことが無いのはそういうことか…」
「だろうねー。でも聞いたことない?【ルミナリエ】ってギルド」
「【ルミナリエ】…!?それって、あの…!?」
お互いにエトリアで会ったことがないと言ったが、かつて所属していたギルド名を出した途端、レオの驚きは顕著な物になる。
「まさかとは思うけど、ボクをからかってるとかじゃないよね」
「そんな事して誰が得するのさー。何ならシリカに証言してもらおうか?」
「うん?ボクのこと呼んだー?」
さすがは商人というべきなのだろうか。ちょっと名前をあげただけなのに彼女は反応した。耳が良いな……。
「まあ呼んだといえばそうかなー。ところでシリカ、私ってエトリアにいた頃のギルドが【ルミナリエ】なのは事実だよね?」
「うん!【ルミナリエ】は有名だし、常連様だったからよく覚えてるよー!」
笑顔で答えるシリカ。その彼女と私を交互に見ているレオ。
「…どーよ(ドヤ顔)」
「なんで勝ち誇った顔してんのさ、ハルニア」
何故かエーレからツッコミが飛んできたけど気にしない!←