未だその傷は癒えずⅠ


 ──第三迷宮

 
 飛竜を見つけた矢先、その魔物に【エスポワール】のメンバーは全員別の所に運ばれてしまった。
 …そこで、思わぬ再会をしたのだ。

 エトリアで私が【ルミナリエ】にいた頃、よく利用していた店、そこにいた店主でもあるシリカ。そして、この迷宮に来て知り合った(ミゾレ曰くリーパーではないかと予想している)青年、レオ。

「…だーれがあのワイバーンに運ばれるなんてこと予想したんですかねぇ」

「俺はてっきり殺されるかと思ったよ!?」

 多分それはみんな思ったんじゃないのかなぁ、とエーレに返しながら、私は改めて地図を見直す。

 地図はある程度は埋まり始めている。とはいえ、まだ階段は見つからない。
 どの辺にあるんだろう、と考えていると、周囲を警戒していたオルフィが帰って来た。

「ん、オルフィお帰りー」

「どうだったー?」

 そう聞くが、オルフィは首を横に振る。…やっぱりそう簡単にはいかないか。

「さっきの方向に出口はなかったが、魔物の数は少ない。ただ、やっぱり、と言うべきか…例の床をいくつか見かけたな。」

「あー…じゃあ対策してからもう一度行きますかねー…」

「ハルニア、もう一度お願いできる?」

「私の精神力が尽きるまでは何度でもやってやりますよー!」

 ミゾレの問いに笑顔で返しながら、私は鞄の中身を漁る。
 …そんな私達のやり取りを、少し離れた所からレオが見ているというのを、チラリと横目で見ながら、私は準備をした。


 ◇


 ザク、ザクと、草を踏むのとは少し違う音がする。今歩いている所は本来、何も対策しないで行くと、ダメージを受ける床ではあるが、ある程度の間ならそれを無効化出来る。
 そんな床の上を歩きながら、或いはたまに遭遇する魔物を倒しながら、私達はこの階の出口を探していた。

 それをどれくらい繰り返しただろうか、目の前に扉が見えてきた。この辺は来ていないね、と呟いたタルトが新たに地図に書き記していく。それを覗き込むように見ていると、シリカが驚いたような声をあげた。
 どうしたんだろう、とそちらに向ければ、レオと話しているようだ。…どうやら、レオもエトリアの冒険者で、かつてシリカの店に来たことが何度かあったようだ。

「ボクが駆け出しだった頃、一緒に行動していたギルドが、シリカ商店の常連でした。そのギルドのメンバーはもう誰も生き残っていないんですけど…」

 そうレオは寂しそうに告げた。
 聞けば、レオは幾つものギルドに入ったらしい。けれど、そのギルドは全て壊滅。いつも彼だけが生き残ったという。

「ボクが疫病神なのかもしれない。だから、ボクは一人でいる方がいいんだ…」

 …成る程、これがレオがギルドに入らず、一人でいる理由なんだろう。

 そしてふと、レオに出会う前に会った、兵士達の会話を思い出した。

 ──仲間殺し

(……ふぅん。そういうことか)

 色々と繋がり、納得がいった。

 
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