直感A+++
後日、ナディカが精霊族である、ということがわかったが、それでも胸騒ぎは消えなかった。
なんとなくだったが、それを遅れてきた先代・シランに聞いてみた所、彼女は難しそうな顔をして唸っていた。
「…トキワよ。それは本当かえ?」
「逆に聞こう。なんでそんな事を嘘つかなきゃいけないんだ?」
「それもそうじゃな。お主は根は真面目じゃからな」
クツクツとシランは笑う。が、すぐにその笑みは消えた。
その眼光に思わず強張る。
「…そうじゃのう…。恐らくじゃが、本能的な物じゃろうな。」
「本能?」
「うむ。特にお主は幼い頃から普通じゃ早々ない経験をしているじゃろ?そして狩人でもある。…しかし…もし、そうでない場合は…」
「場合は…?」
「…血が告げているのかもしれんな。」
血。つまり――風ノ守一族の血。
何故先代がそう言ったのか。それはすぐにわかった。
「まさか、アンタも」
「…ああ。あの子はどうも信用できぬ。元々、私は死霊等の“人ではないモノ”を扱っていたこともあってな…そう言うのはよくわかる方だと自負しておる。」
「そう言えばそうだったよな…。アルカディアではネクロマンサーだったし、ハイ・ラガードじゃドクトルマグス…」
「うむ…そこから考えても、どうも信用できぬ。それに、何故世界樹の麓へ行く必要がある?神の国が本当にあったにせよ…もし、あったら何が目的なのだ?」
*
以前、シランはそう言っていた。そして今日、クオン達は彼女の“本当の正体”を見た。
「先代は何でもお見通しなのか…?大体当たってるぞ…」
「シランさんって、確か一族の長だった人なんだよね。でもそういう人って何かそういう力とかあるんじゃないのかな?」
「…まぁ、否定は出来ないだろうな…うん。」
そもそもあの先代自体がたまによくわからない、というのが俺の本音だ。
でも今回のパターンは正直かなり驚いてる。それにしても――
「一族の血が、教えてくれたとはな…」
時に厭わしいとも感じることのある、一族の力。
まさかそれが教えてくれるとは思わなかった。
でも、その所為なのか
――俺の胸騒ぎは、まだ消えない。
直感のような警鐘
(それでも)
(彼らも、俺も進むしかないのだろうな)