直感A+++


 ――宿屋

 開け放たれた窓から夜風が吹き込む。
 刀の手入れをしていた手を止め、そちらを見る。
 今夜も星が輝き、湖にも映り、美しい風景を作り出す。

 ボンヤリとそれを見て、再び手入れを再開しようとして、ちょうど僕の前で剣の手入れをしていたルイスが目に入る。
 いつもの上着は脱いでおり、既に寝間着姿だ。それが半袖、というのもあって、今日の戦いで出来た傷が見える。と言っても、ハルニアの手によってちゃんと治療されているから、そこに見えたのは白い包帯だけども。
 カチャン、と金属音。音のした方を見れば、銃の手入れを終えたらしいトキワさんの姿があった。
 僕の視線に気づいたのだろう、彼は僕を見た。

「どうした、クオン」

「え、あ。いえ、なんでもないです」

「ん、そっか。…それにしても、今日は大変だったなぁ、お前ら」

 トキワさんがそう言うと、ルイスも反応し、小さく頷いた。

「まぁ……今日は色々ありましたから」

「世界樹到達に宴、それに――」

 それに、あの子の事。

 正確には、僕らは騙されていたんだ、と裏切られたこと。

 以前、海都でも似たような経験はある。それに、ハイ・ラガードでも「聞いた」だけだけどもあったといえばあった。

 しかし、やはり慣れない。

 今日は身体だけでなく、心の方にもダメージがあったみたいで…。

 はぁ、と思わず溜め息を吐いた。

「相当きてるみたいだな。手入れが終わったら、すぐに寝た方がいいぞ。」

「……そうします。」

 僕がそう答えると、トキワさんは立ち上がり、部屋を出ていこうとする。
 その途中で僕とルイスの頭をクシャッと撫でていった。


 
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