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剣士と魔導師


「シノ…次騒いだらアサルトワディ装備してヘヴィストライクするからね?」

 至って優しい声だが、その笑顔は真っ黒だ。…というかへヴィストライクは食らいたくない。あれウォーロックが出す火力じゃないし!
 …うん。FOEに寄って来られるのもそうだが、仲間に怒られる(+瀕死レベルの制裁(物理)が飛んできそう)のは嫌だ。…気をつけよう、俺←

 心にそんな決意をした直後、こちらに向かってくる音が聞こえた。

「何だ…?」

「…こっちに向かってくるような音だね」

 ヴェルデにも聞こえたらしい。音のする方へ視線を向ける。
 音からして、人だと思うけど、ここの階層には二足歩行のドラゴンの様な魔物もいる。以前、何度か依頼でもその魔物と戦ってきた覚えがある。

 まさかとは思うが…その魔物が人だと装って来てるとか…言わないよな?

 あの依頼の時もそうだったが…あいつら意外と執念深かったし…、と思いながら近くの水晶を足場にし、壁に張り付くような体制を取った。あの時も奇襲されかけたし、なんなら奇襲出来るようにする。…念の為だ。←

「……何してんのシノ」

「しーっ!念の為だよ!」

 小声で返せばヴェルデはやや呆れた表情を浮かべながら「はぁ…」と気のない返事をする。そうして、ある方を見た。丁度、音のしてきた…方……――


「あら、他の冒険者…ということは、もしかしてここの採集は終わってしまってる?」


 そう言ったのは、長い黒髪で金と赤のオッドアイのフェンサーの少女だった。その隣には藤紫の髪を持つウォーロックの青年もいる。
 …はい、どう見ても冒険者ですね。俺の奇襲は無駄に終わった!いや、その方がいいけどさ←

 そんな風に一人固まっているとヴェルデが少女の問いに答える。

「はい。つい先程、丁度終えた所です」

 そう答えると、少女は一度頷く。…少し残念そうにしていたがすぐに顔をあげ、もう一度ヴェルデに問い掛ける。

「そう…。あと、この辺りから声?が聞こえてきたけど、何かあったの?」

「何か、魔物の叫び声にも聞こえなくなかったけど……」

「…ふっ」

「誰が魔物だゴルァ!」

 上から少女、青年、ヴェルデ、俺の発言だ。いや…確かにさっきデカい声をあげた。そのあとしっかり注意(という名の半ば脅し)されたけども!しかもヴェルデは吹き出してるし!何で説明してくれないんだ!←

 思わずツッコミのような本音混じりの声を上げれば、青年はこちらを見て「うわっ!?」と驚く。対し同じ様に顔を上げた少女の方は余り驚いていない。

「は……な、なんで壁に…!」

「…なんであなたはそんな所にいるの?」

「ってブラッドは何で動じてないんだよ!?」

 青年はそう言って少女…ブラッドに向かってそう言う。本当、動じてないな、この子。
 壁を蹴り、三人の間に着地する。改めて近くで見るが…探索中に他の冒険者と会う、ということがあるから、もしかしたら彼らとも会ったような気がする。
 そう思いながらも一応質問されていたわけだ、ブラッドの問いに答える。

「いやぁ…君らの足音が魔物のヤツとかじゃないのかと思って警戒してたんだよ。それで、奇襲が出来るように…という訳で」

「壁にいた、という訳だな」

 ブラッドだけでなく、青年の方も納得したように頷く。

「そうそう。っと、自己紹介が遅れたな。俺は【エテレイン】のギルドマスターの片割れ、“飛燕流・一刀無双の武人”のシノだ!」

「同じく【エテレイン】のメンバー、“三属性を操りし海色の魔術師”のヴェルデ。よろしくね」

「よろしく。私は【蒼の魔導書】のリーダー、“激情の魔法剣士”のブラッド。それでこっちが…」

「…“六属性第四導師”のフィーアだ。」

 お互い自己紹介を終える。というか【蒼の魔導書】も何で二人なんだ…?

「えーと、俺達も二人だけど、ブラッド達もなんで二人なんだ?」

「あー…実は――」

 ブラッドがそのクエストの内容を話す。…案の定、俺達と同じ物…ヴェルデの言っていた通りだ。
 しかも、彼女が言うにはまた別のクエストもいけており、他のメンバーとは二手に分かれているそうだ。

「おわー…マジか。いや、俺達もその採集の方のクエストを受けててな、メンバーをいくつかに分けてるんだ。」

「ふーん。…そういや【エテレイン】って人数多いんじゃなかったのか?」

 そう言ったフィーアの台詞に俺は言葉が詰まる。いや、確かに多いんだよな…【エテレイン】。…その代わりというか…人が多い分、変わり者も多いけれども←
 そして人が多いというあるデメリット…今回はそれに見事にぶち当たっている…そのことを言うべきなのか…と俺は戸惑っていた。

「いやぁ…確かにそうなんだけど、こう人が多いと都合が合う合わないとかが出てきちゃってさ。」
 
 と思えば苦笑しながらヴェルデが答えていた。…うん、サンキュー、俺じゃ多分駄目だったわ←

「成る程…。人数が多いというのもまた問題があるのね。」

「まぁね…。そういえば、そっちはどれくらい集まったの?できれば教えてくれる?」

 俺達はまぁまぁ集まってるけども…とヴェルデがそう聞けば、ブラッドとフィーアが自分達の鞄を手にする。

「ええと…そうね、そこそこ集まってるけど…鉱石がまだ揃ってないわね」

 どうやら採取で取れる物は既に回収済みとのこと。…鉱石か…今回は俺達もまだまだ微妙なんだよな。しかも、採掘系が得意であるセリアン族はまさかの俺だけという状態だ。意地でも見つけなければいけないのだが…まだまだというのが現状だ。

 
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