剣士と魔導師
――第四階層 虹霓ノ晶洞
キラキラと輝く水晶のダンジョンの中、採掘の為に取り出した道具を使う音が周囲に響く。…採れたのは、蒼鉛が数個。それだけだ。
「う~ん…やっぱり見つからねぇ…」
「…なかなか厄介なクエスト見つけたよね、シノ…」
採掘ポイントから発見した採集物を鞄に仕舞いながらそう言うと、ヴェルデが溜め息を吐きながら立ち上がる。
「せめてミゾレやセージがいれば…あとはミルとか…」
「つっても…ミゾレ達もまた別行動で採集場所巡ってるんだよな。…ミル達はシランに振り回されてるし、リーベはまたヴァルムと何処かに行ってるし、熟練組も元の世界に帰省中だし…」
「俺達のギルドは人数多いけど…こうなると困るね…。」
お互い、幸せが逃げるんじゃないのかってくらいに今日何度目かの溜め息を吐く。
…どうしてこうなったのか?それは俺が酒場で偶然見つけたクエストが原因だ。
「第四階層で採集出来るアイテムを全種類、かつ出来るだけ多く納品せよ」というモノだ。だが、メリーナが言うには「あまり受けてくれる冒険者やギルドがいない」とのこと。仮に受けたとしても、途中で断念してしまう者が多く、依頼人も困っていた。
で、この時の俺はこう思っていた。既に第四階層は突破しているし、そこで取れるアイテムも把握している。それに、うちのギルド【エテレイン】は人数も多いから、他メンバーにも頼んでみれば早く終わるかもしれない…ってな。
だから多分大丈夫だろう、そう思っていた。けど…実際はというと……
「あー…今日は自主練したい日なんだ~…(レオーネ)」
「すまんの…今ミル達に協力を仰ぐのは無理じゃ。(シラン)」
…などなど。何故か今日に限って都合が合わないというメンバーが続出。しかも、昨日からフレイ達も元の世界に帰省中という…。
結果的に、このクエストに参加できたのはいつもの俺達5人と、美玲とクラース、ルネア達3人…というメンバー。
しかも、採集する量と時間削減ということもあり、負担が出ない程度にメンバーも変更。
なので今、俺とヴェルデという最少メンバーになっている。その点は他のメンバーも同じだが……
…まぁ、俺はマスラオだし、ヴェルデはウォーロックという点では偏りはない…ハズだ。…人数には突っ込むな、本当←
多分レベル的にも大丈夫だろうし、回復アイテムもちゃんとある。…勿論、油断なんてしないぞ!?
「…まぁ、なんとかなるッ!…多分」
「シノ、それ何回目…?」
「言うな…ヴェルデ…」
「まぁ、凹んでいるよりはマシかな。…そういえば、メリーナさん言ってたよね」
「? 何をだ?」
「だから、このクエストを受けたってギルド。…どうやら俺達だけじゃないみたいだよ」
「そうなのか!?」
思わずそう大声を上げるとヴェルデに「静かに!」というジェスチャーをされる。…そうだった、ここの階層のFOEには音で反応するヤツがいたんだった。
改めて声を小さくしながらヴェルデに聞いてみる。
「……何処なんだ、そのギルドってのは」
「確か【蒼の魔導書】だったはず。」
【蒼の魔導書】…。確か、そのギルドも世界樹を踏破したギルドだっけか。何度かその名前を聞いたことがある。
「ふーん…俺ら以外にも受けてんのか…。」
「らしいよ。メリーナさんがこれで二つ目のギルドが受けてくれたって言ってたから」
「んんん!?…俺らと【蒼の魔導書】だけなの!?」
「……余程アレなんだろうね、この依頼。」
マジかよ…。苦笑するヴェルデを横目に見ながら俺は頭を抱える。
…なぁ、冒険者ならこれくらい怯まずに行けばいいのに何で受けないんだよ!?←
「ちっくしょおーーー!!!」
洞窟内に響き渡る程大きな声を思わずあげる。…直後、ヴェルデに杖で殴られたけど←