魔物との対話・その後
◇
足りない薬とかを思い出し、慌ててヴェルデ達を追ったが…どうやら入れ違いになったらしい。
(あちゃー…まぁいいや。こうなったら俺が買いに行けばいいんだし)
そう考えながら、馴染みのあるセリクの所へ向かう。
「いらっしゃい!お、【エテレイン】のシノじゃん!」
「おう!お邪魔するぜー」
「今日は何にするんだい?」
「えーっと、これを頼む!」
元はヴェルデ達に渡すメモのつもりだったが、まあ仕方ない。ついでに量が多いからそのままセリクに見せた。
「ふむふむ、結構多いねー。」
「だろー?まぁ、第二階層もなかなかだし、油断したくないからな」
「さすがだねぇ。えーっと、ちょっと待っててね」
そう言ってセリクはメモを見ながら注文された薬やアイテムを取り出していく。
…その時、俺は何かに気付いた。
「……?」
何かに見られている。そんな感じがする。
相手に悟られないように、商品を眺めるようにしながら周囲を探る。だが、見つけられない。
それでも、この妙な感じは消えない。……これは気をつけた方がいいか?
「お待たせー!全部で1500enになるよ!」
「お!りょーかい!」
丁度セリクに声を掛けられたので、一応周りへの警戒はしつつも彼に向き合う。代金を払って商品を受け取り、セリクに見送られながら店を出る。
出来るだけ人通りが多い道を選ぶ。それでもまだ、付けられているな……。
チラリと脇道を見、そちらに寄るようにして歩きながら、様子を見る。そして、タイミングを見計らい、脇道に飛び込んだ。
樽が積まれていて、隠れるのに丁度よく、そこに身を隠す。息を殺し、様子を窺う。
そこから見たのは、アースランの女性がキョロキョロと見回していた。…だが、その様子は普通とは言えない。何処か挙動不審に感じる。
……うん、これは間違いなく俺を付けていたヤツだな。
一人納得しながらも、相手の様子を探る。どうやら見失ったと判断したらしく、別の所へ向かう後ろ姿が見えた。
(……ふぅ。なんとかなったな)
にしても、付けられるとか…俺なんかしたっけ?それとも、【エテレイン】自体で何かやったとか…?
色々と思い返すがよくわからなかった。←
けど、やっぱり何か引っ掛かる。
その引っ掛かる何かがわからず、モヤモヤする。
(んー…後でミゾレ達にも聞いてみるかぁ…)
さっきの追っ手はいなくなったが、念の為警戒しながら宿への帰路についた。