魔物との対話・その後
第二階層を踏破し、二つ名を得て達人となった【エテレイン】一行。
彼らが第三階層に入った直後、その異変は起き始めたという。
◇
リーリャがお菓子を作りたい、と言ったので、その材料の買い出しに行く。そうミゾレ達に告げてアイオリスの大市に向かう。普段よく利用しているセリクの所とは違う場所に俺ことヴェルデとリーリャは来ていた。
店主はてっきりブラニー族かと思っていたが、意外にもアースランの男性だったことに俺は驚いていた。…まあ、そりゃあいるよね、うん←
「うーん…」
天色の髪のブラニーの少女が店先に並んだ果物を見て唸っている。…俺にあまりよくわからないが、リーリャ達ブラニー族には食物や薬草等の新鮮さの見極めを一目見てわかると聞いたことがある。
どれも新鮮に見えるのだけれど…と俺は思うが、そこから更にいい物を探そうとしているのかもしれない。
「これも良さそうだし…こっちも…」
困ったように眉を下げながら二つの果物を手に取る。…やはり彼女らブラニー族が見ると違うのか…
そう感心していると、一瞬魔力を感じた。
迷宮で感じるならまだしも、こんな街中で…?と疑問に思い、周囲を警戒する。
魔力に気付けなかったアースランの男性とリーリャはきょとんとしていた。
「どうしたんだい?ルナリアのお兄さん」
「いや……」
やっぱり気のせいかな、と思った時、リーリャの手にしていた果物の一つが燃え上がった。
「おわっ!?」
「ふぇっ!!?」
「リーリャっ!!」
驚いた彼女は果物から手を放した。その隙を狙って俺はマギを操り、燃える果物ごと凍らせる。
氷はアイシクルランス程強いものではなかったが、あれぐらいの小さな炎なら強引に押し込めて消すことも簡単に出来る。目論み通り、火は消えた。
ホッとしたのも束の間、すぐにリーリャと同じ目線になるようにしゃがみ、彼女の手を取る。
「リーリャ、怪我はない?」
「は、はい…!大丈夫ですよ!」
そう言って自分の手を見せてくる。そこには何もない。…確かに果物に火はついたが、初期の段階で手を放していたから何ともなかったのだろう。
それがわかると思わず安堵の息を吐く。チラリと落ちた凍らせられた果物を見る。
氷の中に閉じ込められたソレは上半分が黒く炭になっている。…それなりに火力はあったようだ。
改めて店主の方に向き、頭を下げる。
「ごめんなさい、商品をダメにしてしまって…」
「いやいや!今のはお兄さんがやったんじゃないんだろ?でも、怪我もなくてよかったな!」
「ハイ!でも…これは弁償しないと…」
「いいっていいって!確かに一つダメになっちまったが、誰かにその倍を買ってもらえればいいのさ!」
二カッと笑う店主を見て、ブラニー族に劣らない商魂を感じた←
申し訳なさも感じた所為か、リーリャはこの店で材料のほとんどを揃えていった。意外と多い荷物は俺が代わりに持つと、「すみません、でもありがとうございます!」と言ってきた。
……それにしても、いきなり何で燃え出したんだろう…。
直前に感じた魔力も気になる。偶然とは思えないし…
疑問に思いながら、俺とリーリャは宿の方に向かっていった。