雨と翠


※クエスト「グリフォンの家」のネタバレ注意


 ―ジュネッタの宿・テラス


 なんとなく、星が見たくてテラスに出る。丁度、誰もいない。それに安堵し、思わず息を吐いた。

「ふぅ…」

 今日は…あるクエストを終えて、早めに休んでいる。

 …そのクエストが、ある冒険者を探してほしいというものだったが、その冒険者は…もう、生きていなかった。なので、その形見として兜を持ち帰って、依頼人に渡した。…そんな内容だ。

 それを終えて、メリーナが少し話してくれたのだ。彼女もまた、かつては冒険者だったが、やめてしまったそうだ。その理由の一つとして、「生きて帰ること」が含まれると、私は思う。

「………」

 蒼髪のモノクルの紳士に、彼の娘の遺品となってしまった兜を渡した時、メンバーの誰もが暗い表情をしていた。

 改めて樹海の厳しさ知った。と、同時に決心が生まれた。




 ―――何があっても、仲間を守りきる。

 それがたとえ……――





「…おい」

「…アナタは…」

 先程までのことを思い耽っていると、ルナリア族でのないのに、その種族がよく着る服装に身を包み、赤いマフラーを身に着けている男性…この【エテレイン】の仲間の一人でもあるミナモが話しかけてくる。

 …その表情は、睨むようにも見えて…それでいて悲しそうにも見えた。

「なに?」

「いや。…アンタが昔の誰かさんと似たような顔をしていたからな…つい。」

「…?」

 首を傾げると、ミナモはふぅ…と溜め息を吐く。

「今日…何があったんだ?」

「え…」

「いつも騒がしいぐらい元気なシノやリーリャが大人しかったからな…何かあったんじゃないのかと思ったのさ。」

 一応、セージとヴェルデから5階へ探索しに行くとの話は聞いていたが、と付け足しながら、じっと私を見つめてくる。

「…言ってみろ、ミゾレ。話せば多少は楽になるかもしれないだろう?」

「そう…ね。じゃあ、話すわ。」

 ミナモに今日のクエストについてのことを話すと、少し考え込むように黙り込む。そして、夜空を見上げた。

「…だからか、みんな気落ちしていたのは…」

「ええ。…気落ちした状態で探索を続けるなんて、今の私達にはまだ難しいと思ったの。だから……」

「今日は早めに休みを取った、というのか。…成る程、賢明な判断だな。」

 そう言うミナモの横顔は少しだけ、笑っているように見えた。

 
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