短いお話


【怒らせると……】


「………」

 なんか、ルイスの様子が変だ。

 確かにルイスは無口で表情変化が乏しいけれど、何だか今日は明らかに変だと思う。

「あの、ルイス」

「……何。」

 俺が話しかけると、少し不満気な顔をしながらも返事をした。…うん、これ機嫌が悪いってヤツだ、多分。

「…フレイ、何?」

「えっ、いや…ごめん、なんでもない」

「そう。」

 素っ気なく言うと、くるりと背を向けて歩き出してしまう。その様子を見ていたエルディアが「あー…」と声を上げた。

「なんですか、エルディア」

「いや…あれがそうなのか、成る程…」

「? どういうことですか、それ」

 俺が首を傾げていると、エルディアは一度ルイスの方を見てから耳打ちしてくる。

「実はね、ルイスの弟君に会ったことがあるんだよ。それで、ちょっと教えてもらったことがあってね…」

「それは…?」

「うん。ルイスが怒った時が面倒だってこと。…聞いた通りの反応だから、ありゃ怒ってるね」

「えっ…」

 詳しく聞いてみると、彼が怒った時は妙に頑固に…というか意固地になるのだそうだ。
 しかも意外と根に持つらしく、結構長くこの状態が続くらしい。

「ちなみに、謝れば機嫌はすぐに直るらしいよ。」

「えええ…本当ですか、それ…なにかやらかしたのかなぁ…」

「さー…どうだろ」

 彼女につられてもう一度ルイスを見る。
 何処か不機嫌なオーラが漂う彼に、ノルンやシズクがオロオロしていた。…このままだとパーティの雰囲気も悪くなる。どうにかしなければ……

 だが、これと言って心当たりがない。探索中に何かやらかしたのか、それとも戦闘中か。

 同じようにエルディアも考え込むが…やがて首を横に振った。

「…ダメだ、思いつかない」

「ですよね…。ノルンやシズクがやったとも思わないし…」

 むしろあの二人が何かやらかしても、すぐに謝ってきそうだが…。何となく三人の方を見ると、恐る恐るというようにシズクがルイスに話しかけている所だった。

「あ、あのっ…ルイスくん、どうしたの?…さっきから、何か…変だよ…?」

((きっ…聞いたーーー!!?))

 しかも、どストレートに!勇気あるな、シズク!←

 そういうルイスというと、少し黙り込む。…その間の無言の威圧が怖い。
 が、不意に口を開いた。

「リントが……朝食のリンゴを勝手に食べた…それが許せなくて…」

(まさかの食の恨み!?)

「あ~…食の恨みって恐ろしいからねー…」

 納得したのかエルディアは苦笑しながら頷いた。…いやいや、朝食のリンゴって…確か、みんなそれぞれの皿に配っていたはず……あ。

(そういえば……今朝、リドウがリンゴ食べないからって配っていた…)

 かといって一人数個程度しかないから、大人数に渡ることはない。その後…エルディアとルイスとアクアでジャンケン大会になるくらいに発展していたけど……。
 確か、その間にリントが食べていたんだっけ。オルフィやラベントに注意されてたけど……

「いやー…あれかぁ。確かにショックだったけど…」

「……」

 エルディアが言うと、ルイスは不満そうにムッとし、少し頬を膨らませる。…何だか子供みたいだ。…意外と子供っぽいところもあるんだ…

「…アタシも悔しかったからさー…帰りにリンゴ買っていこうか?」

「……いいの?」

「うん!」

 彼女がそう提案すると、ルイスは少しだけ笑顔になった。…なにこれ、ちょろい…←

 で、でも…これで一応解決…かな?

 

 それは意外な一面



(よし!そうとなったら帰るぞー!)

(うん)


(って、もう帰るんですか!!?)



 
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