枯れた森、真実は朽ち果て
「……行ったさ。けど、話にならなかったんだよ。何が原因でそうなったのかは知らないけど…俺が会った"風ノ守"の人はまともに話せる状態じゃなかった。…里の人が言うには、呪われたんだって…。」
トキワの答えにモリビトの少女は一瞬目を見開く。暫く黙り込んだ後、クルリと背を向けた。
「…やはり、所詮は人間なのだな。」
吐き捨てるように言うと、一度振り返る。その目には、敵意しか残ってなかった。
「貴様たち人が樹海に潜ることを我らは許すわけにはいかぬ。…この先を進むので貼ればこの森が貴様らを止めるだろう」
少女はそう告げると、素早い動きで俺達の目の前から走り去った。
その姿が見えなくなると、俺達は息を吐いた。…なんだか、息苦しさを感じていたからだ。
「…あの話、本当なのかしら…」
「…わからねぇ。けど、進むしか無いんじゃないのかな。」
俺がそう答えると「それもそうだね」とリーナが疲れた表情ながらも微笑んだ。
「トキワ、ミナモ…さっきの話は」
「ああ。…このメンバーだから言っただけだ。他のヤツには話さないでくれ。」
「…わかってるさ。それと、伝承についてだけど……」
そう聞くと、ああその事か、というように少しだけミナモは微笑んだ。
「……伝承の件も俺の憶測だ。なんせ俺が8歳の時の話だからな…」
「うぇ!?そんなに前の話ってこと!?」
驚いたハルニアが変な声を上げる。今回はリーナは突っ込んでこなかったが……20年近くも前のことを覚えているのかよ、この兄弟……すげえな←
「まぁ…さすがに昔過ぎて多少曖昧だけど……確かにそんな事は言ってた気はするな。」
「えええ…トキワさんまで……」
凄い…と素直に感心するハルニア。その気持ち、わからなくないぞ←
「…さて、真実を知るためにも進もうか」
「ああ!」
「…だな!」
「うん!」
「了解した」
リーナの声にそれぞれ返事をし、俺達は枯れた森の迷宮をさらに進んで行った。
枯れた森、真実は朽ち果て
(けれど進むことは)
(止めることはない)
(この"世界樹の迷宮"の謎を、真実を知るためにも)
(たとえ"進む"ことが、誰かの罠であっても)