枯れた森、真実は朽ち果て


「生憎、俺達はエトリアの人間ではないんでね…エトリアでも聞いたことがないんだが、その"協定"とはどんな内容なんだ?」

 そう俺が尋ねると、少女は溜め息を吐いた。

「……人はそこまで忘却したのか」

 呆れたように呟き、今度は侮蔑の目で見つめてくる。…いや、本当に知らないから←

「いいだろう。教えてやる。代わりに事実を知ったら大人しく帰るがいい。我らと貴様たちの間の約束を…」

 あ、教えてはくれるんだ←
 とはいえ…さっきの言い様だと、モリビトと人間には何かあったんだろうな。

「古き時代…、神の樹木によってこの樹海が生まれた頃、我らもまたここに生を受けた。
 樹海の外にいた貴様たち人間は樹海に驚き、我らの住む地へ足を踏み入れた。
 我らと人は激しく争い、多くの血が流れた…」

 少女の見た目には似合わない口調で語り出す。
 それと、昔…争いがあったのか。 
 色々考察したいが、まだ話は続いている。 

「そこで、互いの長が話し合い人は樹海の外で…、モリビトは樹海の中で生きる事になった
 そして互いの生活に干渉しないと協定を結んだのだ
 …以来、人がこの樹海の奥に足を踏み入れることは禁じられ樹海は我らのものとなった」

 そこまで語ると、少女は俺達に右手を突き出す。

「…理解できたら戻るがいい。これ以上進んだ時にはその命保証できぬと思え」



 何度目の警告だろうか。まあ、確かに…今の話は理解できたが……。



「で、結局モリビトって何なの?」

 樹海で生まれたってのはわかったけど…とハルニアが首を傾げながら問う。モリビトの少女は「全てを忘れくらすならばそのまま樹海のことも忘れることが幸せだったであろうに…」と呟く。そして、思い出したように語り出した。


「モリビト…、すなわち我らは樹海で生を受け、人とは違いこの森を守る運命にあるのだ」


「樹海を…守る…」

 だからか、ここまで警告してくるのは。

「成る程な……」




「まさかとは思うが、貴様たちも役目を忘れたとでもいうのか?」




「「「えっ」」」





 今の少女の言葉は…俺達ではなく、ミナモとトキワに向けられていた。





 



 

 
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