枯れた森、真実は朽ち果て
◆
粗方地図を埋め、埋めていない辺りに階段があるのではないのかと予測する。そこに向かって歩き続ける。
道中、遭遇した魔物を倒し、少し休憩を取っていた。
「……なぁ、兄貴」
「何だ。トキワ」
「あのモリビト、俺達を敵視していたけどさ……気付かなかったか?」
「…ああ、やっぱりか」
(やっぱり?)
なんだかこの兄弟が意味深な会話をしているが…どうしたんだろうか。
同じことを思ったのだろう。ハルニアが二人の間に入り、「何がです?」と聞いていた。
「いや、な。…例のモリビトが俺を見た時、一瞬驚いていたんだ。」
「正確には俺とトキワだろうな」
「え…ピンポイントで二人?」
意外な回答にリーナが首を傾げると、ミナモは頷き返した。
「ああ。その後は…明らかに睨みつけてきたな。」
「マジで?」
確かに睨んできてはいたが…そう言えば、何だか…あの時、急にその目が鋭くなった気もしなくないな。
「でも…何でお前らだけなんだ?」
俺がそう聞けば、トキワは「わからん」と首を横に振り、ミナモは考え込む。暫くしてから口を開いた。
「……まさかとは思うが、"風ノ守"の血について何か知っている……?」
ミナモの言葉にトキワが肩を震わせ、目を見開いた。
「兄さ……じゃなくて兄貴、何で…」
「あのモリビト、俺達を見て"驚き"そして"睨んで"きた。…俺達兄弟と似たような容姿をしているのはこのメンバーだと、他にもいるだろう。けれど…視線は確かに俺達兄弟に向けられていた。お前も気付いているだろう?」
「っ……確かにそうだけど、なんで…」
明らかに動揺するトキワ。…何かに怯えているようにも見えるには…過去のことを思い出してしまっているからなんだろうか。
「…あくまでも俺の憶測だ。…リーナ、トキワが落ち着いたら探索再開しよう。」
「わかったわ」
心配そうに二人を見ていたリーナが頷いた。…探索再開はもう少し先かな…これは。
◆
トキワが落ち着きを取り戻した所で休憩を終え、枯れた草を掻き分けて進んでいると、あの時のモリビトの少女が現れた。
相変わらず厳しい顔でこちらを見てくるが…ミナモとトキワに気付いたのだろう。その表情がさらに険しくなる。
「樹海の守護者コロトラングルを退けた者たちか。その力は認めるがこの樹海の奥に何の用だ?
…人は我らモリビトとの間に結んだ協定を忘れたのか?森の奥に進まぬという約束を?」
強い口調でさらに睨みつけてくる。こりゃ…本当にモリビトは人間を嫌っているんだな。
にしても…気になるワードはあるな。協定…か。執政院や冒険者ギルドとかでそんな話は聞いたことがないけど……