枯れた森、真実は朽ち果て
――第四階層 枯レ森
生命の緑を失った枯れた植物が作り出した迷宮を歩く。ざくざく、と砂を踏む音が響いていた。
「…執政院も無茶なミッションを出すんだな。」
「そうね…。人に似ている姿の者を駆除しろだなんて……」
浮かない表情をしながらリーナが頷く。…それもそうだ。というか、俺も…いや、みんな同じく表情が暗い。
第三階層辺りで目撃されていた少女…モリビトという種族の生き物だった。俺達には何か敵意を向けているし…「警告」といって魔物は呼び出すわ…ぶっちゃけ散々だった。←
その事を執政院に報告すれば、駆除しろというミッションが下された。とはいえ……俺達人間みたいな見た目をしているヤツを殺せっていう事でもあり、正直気が乗らない。みんなの表情が暗いのはそれが原因だ。
たとえモリビトが人外でも、ほとんど俺達と同じような見た目で…他の魔物とは違う。しかも、話せる。…話せる相手なら、話し合いで何とかならないのだろうか。
頭の中ではそんな考えがずっと巡っている。…まぁ、魔物が来たらそんな暇がないんだけどな。
「クロード、前っ!」
「え? っておおお!?」
ミナモに呼ばれ、何となく前を見るが、いきなりグイッと後ろに引っ張られ、そのまま地面に尻を打った。
「いてて…何だよ!」
「ぼさっとするな、クロード!」
「はぁ!? 意味がわかんねぇよ、トキワ!」
「足元を見ろ!」
トキワに言われ、ムッとしながらも足元を見る。そこにはこの階来てよく見かけた流砂があった。…しかも、俺達が目指している方向とは見事に反対方向へと流れている。
「…おおう…」
「まったく、ボーっとしてるからこうなるのよ」
「リーナに言われたくはねぇな」
「……言われたくなかったら、しゃんとしなさい!」
拳を作りながらリーナにそう叱責される。まぁ、言っていることはご尤もだけどな。
「もー…そんなに気掛かりならエトリアに戻れば?」
そう言い、ハルニアがアリアドネの糸を押し付けてくるが、それを押し返す。
「嫌だね。逆に気になるし…それに、何でモリビトは人間を嫌っているのかが知りたいし。」
「…は~王子サマの好奇心は凄いねぇ。」
「ですね~」
やれやれ、と言うようにトキワとハルニアが肩をすくめる。…いいじゃないか、別に←
下の階へと向かう階段を見つけ、階段を下りていく。
…この層に来てから、魔物が強い。その為、紙防御(自覚はある)すぎる俺が前に出続けるのが少し辛くなってきた。そのことを考慮し、今まで剣を装備していたが、慣れるまでは弓を装備し、後列で戦うことになった。
もともと俺はバードだし、仕方ないといえば仕方ない。…とはいえ、レンジャーだってそこまで前に出て戦う職業じゃないハズだ。
俺の前を歩く長い金髪の青年の背中を見ながらそんな事を思っていた。
ふと、トキワが【ルミナリエ】に入ってから、前に出て戦おうとする彼とその兄であるミナモとの喧嘩が暫く続いたことを思い出す。…結局ミナモが折れて、危険になったら後列に下がる、という約束になったが。