第四話 報酬と冒険者


 ◇

 ──【暁ノ星】ギルドハウス前

「ここが【暁ノ星】のギルドハウスっス!」

 シュトライン王国、その栄える街の中。
 オレとリュイ、そして道案内に来てくれたリディーナの3人はそこにいた。

 …セオルドはあの後ユーリスと何やら話があると言って来なかったが…。
 そっちはそっちで少しだけ気になる。あとでルナリーフにも聞いてみるか。

 改めてギルドハウスを見上げる。
 …特段豪華な作り、という訳ではない。周りの建物と同じくらいの物だ。
 とはいえ、一軒家よりは少し大きめの家くらいだろう、それくらいに見える。

「それじゃ、突撃っすー!」

「いや待てーーー!?」

 オレの静止を振り切って、リディーナはギルドハウスのドアをノックした。
 こいつ容赦ないな!

「はいはーい、どなたでしょー?」

 中から女の声が聞こえてきた。
 …多分、成人はしていないくらいの女性、というより少女くらいの声だ。

「シュトライン王国騎士団のリディーナっス!
 ちょーっとお尋ねしたいことがありまして!」

「なるほど騎士団の人……騎士団んん!?」

 少女の声は一瞬納得しかけたが驚いた声を上げた。
 …まあいきなり騎士団の人間が来るとなれば驚くよな、そりゃ。

「え、えーっとちょっと待ってて…」

 そう言って他にいる仲間に聞きに行ったのだろう、しばらくすると戻って来たのかそのままドアを開けた。

 ドアから顔を出したのは短い黒髪の少女だった。
 …と、その背後から金髪で赤い眼をしたエルフの青年も現れる。

「…ウチに何の用だ。」

「ウチっていうか用があるのは【暁ノ星】かな?」

 ぶっきらぼうに答えるエルフの青年とは対照的に好意的に受け答える黒髪の少女。
 なんというか完全に正反対の二人だな…。

「そうっすね!…あ、別に何かやらかしたからお説教とかそういうのじゃないので安心してくださいね!」

 リディーナがそう答えると、二人は明らかにホッとした表情を見せた。

「あ、よかったー!
 パーティの誰かがついにやらかしたのかと思った!」

 いや……その言い方もどうかと思うけどな?
 内心ツッコミどころ多いな…と思ってるとはた、と少女がこちらを見た。

「あれ、もしかしてその人達依頼人?」

「あー…依頼人……とはちょっと違うかな。ただ会いたい人がいるというか」

 オレがそう答えると、少女がなになに~?とこちらに近づこうとする。
 …が、エルフの青年がそれを引き留めた。

「?どったのクラース?」

「……いや、何でもねぇ。何でもねぇ、けど…」

 クラースと呼ばれたエルフの青年はチラチラとオレとリュイを見ている。
 ……え、何だ…?
 まさか神であるのがバレた…!?

「…アンタから精霊の気配がした気がしてな」

 そう言ってクラースはリュイを見た。
 リュイはというと視線を感じた途端オレの後ろに隠れてしまったが。

 オレじゃなくてリュイの方か……。と少し複雑な気持ちになりながらも疑問に思う。

 確かリュイはホムンクルスのハズだ。
 なのに、精霊の気配がする…だと…?

 そんな気配は、あまり感じなかったと思うのだが──

「…………あれ、気の所為…だったか?」

 クラースが首を傾げる。
 もー何言ってんの〜と少女に頬をツンツンと突かれている。

「あ〜…もしかして、ここに来る直前までルナリーフさんと一緒にいたから、とかっスかね?」

「別の精霊と一緒に居たのか。…その可能性はあるかもしれねぇな……」

 変な事を言って悪かったな、とクラースが頭を下げる。
 オレ越しに見ていたリュイが「だ、大丈夫ですよ…!」と慌てていた。

 
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