第四話 報酬と冒険者


「ちなみに『どうしようもない奴』っていうのは…?」

「そう、だね…。
 どうやらそのレベルとなると素材自体は人間ではなく魔物が使われている事があるようです。」

「ただ魔物を素材に使ってる分、今度は普通の魔物よりすんごい強いというオチなんスよね…。
 で、魔物なんて使ってるから人間の時以上に制御出来なくて脱走という悪循環極まりないというか、なんというか。」

 セオルドとリディーナがそれぞれ困った表情でそう答える。

 ……本当に悪循環だった。
 聞いていて頭が痛い。

「…結局のところ、一体何目的でかはわからんが…危険な実験考えている輩が一番悪いというのはよくわかったし、ソイツが一番最低最悪のクソ野郎というのも理解した。」

「おい若造、言葉言葉。…気持ちはわかるが。」

 ルナリーフに小突かれたが気にしない。
 …だって変に見栄を張ったところでボロが出るだけだろうし。

「堕天の怪物に関しては、これくらいか…?
 発生の原因と討伐事情は理解した。
 ……完全解決は実験を行っている者を叩く以外方法が無いのも、な。」

 こうして改めて考えると、人間の手に負える範疇を越えつつないか…?と感じる。
 あまりにも「行き過ぎた」場合は神々の介入で「正す」事はあると聞いた事がある。
 ……こうしてオレがこれから関わるのも、それに該当するのかは微妙な所だが。

 見方を変えれば、先回りして潰している輩も、ソイツなりの考えで「解決」しようとしているようにも思える。
 …ただ、騎士団や衛兵──国が考えているやり方とは大きく異なるようだが。

(……下手にオレが手を出すのは良くない、のか…?)

 セオルドのオレに対する反応を見る限り、オレが何か大々的に指示を出せば恐らくそれに従いそうな雰囲気を感じる。
 …あまり大きく動かない方が良さそうな気がしてきた。


(正直、オレの介入でこの国の運命を大きく変えるとかはまだしたくないし……。)


 神という立場の強さを改めて実感してゾッとする。


 恐らく、神の一言で国は簡単に滅ぶし、混乱に陥れる事も可能なのだろう。

 
 ──嘗て、ユウサリが「運命」を書き換えて滅ぼしてきたように。
 ……その一言で「黒い獣」を起動させたように。
 
 ……だからこそ、「神である」事を隠して、人間の様に世界に溶け込む。
 ──【異世界の放浪者】という役割持ちの時雨達の在り方を今、理解した。

 それならば。

(……事の成り行きは、可能な限り傍観しよう。)

 介入は極力行わない。

 その代わり、リュイの事をどうにかしたい。

(……なんだか神の我が儘みたいだな)

 この選択に思わず苦笑した。
 
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