第四話 報酬と冒険者
冒険者。
危険を顧みず、浪漫と夢を追い続ける者。
言い換えれば魔物討伐のプロフェッショナルともいえるだろう。
だが……
「その、堕天の怪物は普通の魔物とはワケが違うだろ。
…元々は、人間だった者、なんだろ?それって……」
「人殺しに等しいのではないか、でしょ。言いたい事はわかるわ、若造。」
容赦なくルナリーフがオレの言いたかった事を言う。
人殺し、という単語を聞いて、ユーリスが俯いた。
……どうやら彼女はこういう話題が苦手のように見える。
それに気づいたらしいセオルドが心配そうに彼女に話しかける。
「…その、ユーリス。席を外してもいいんだよ?」
「そうしたいところだけど、話し声はよーく聞こえてしまうから。…大丈夫、無理はしてないから」
そう苦笑して、ユーリスは首を横に振った。
…そうか、半分とはいえエルフの血を引いているから耳は良いのかもしれない。
それなら席を外したところでは大して変わらないのか…。
「うーん、なんか申し訳ないっす。でも話しは続けますよー。
ルナリーフさんの言う通り、見方を変えれば人殺しに変わりないっす。
…なので、王国の冒険者ギルドに登録していて、尚且つ一定のランク以上の冒険者に同意の元で依頼する形にしてるっス。」
……曰く。
堕天の怪物=元人間であるが故。
シュトライン王国の冒険者ギルドに正式に登録している者で冒険者のランクが銀以上の者。
そして「堕天の怪物」が何なのかという説明を受けた上、それの討伐を行う事を同意した者のみに依頼をしているらしい。
冒険者のランクは「青銅→銅→銀→金→白金」の5つに分けられており、銀ランクの者はそれなりにいる様だ。
…その中で同意を得た者達は半分程度。
それでも銀ランクに到達する=中堅以上の実力者でもある為、討伐に関しては問題はないらしい。
「成る程…。」
何も知らずに倒して、実は人間でした、と知るのはあまりにも精神的なショックも大きいだろうし…。
同意を得ている以上、その冒険者達にも覚悟があるという事なのだろう。
「まあそれでも…銀ランクの人らでもどうにもならないレベルの堕天の怪物がたまーに出てくる事もあるっス。」
……何だかまた不穏なワードなんですが。
「…え、何。そんなにヤバイ奴がいる事あるの??」
「残念ながらそう言う事があるっス。一体何を考えて作ってるのか…。
さすがにそのレベルとなると材料に人間以外も混ぜてるみたいなやべー奴も居たことがあるっぽいっスね!」
マジで実験考えてる奴クソ野郎では?
という本音を押さえて話の続きを聞く。
「そう言う時は唯一の白金ランク──2人組の冒険者に任せてるっス。」
白金ランク。
最高ランクの冒険者。2人組……少人数なんだな。
「短期間であっという間に最高ランクに上り詰めたトンデモコンビ!
…なのに他の冒険者もどんな人なのか顔は未だにわからない謎の二人組なんス!
まあセオルドさん含め騎士団のごく一部にしか顔は知らないそうですが!
ただ最近、活動が減ってるみたいで…。」
困った顔をしてリディーナはチラ、とセオルドを見る。
彼も肩を竦めて口を開いた。
「何故かはわからないけど活動は控える、と連絡が来ていてね…。
どうしようもないのが現れたら討伐は行うと言われてて、現在は最低限しか動いてないみたいだ。」
彼らにも事情があるのだろうから仕方ないのだけど、と付け加えるが…。
正直困っているように見えるな…。