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第二話 魔導師と精霊


 ◇

 イツキがそろそろ帰る、と言うのでユーリスが見送ろうとしたが彼は断った。

 …代わりに、何故かオレを指名して来たが。


 家の外に出てあと数歩で魔除けの結界の外になる、と言う所でイツキが振り返った。

 …その表情は笑っていたが何処か強気で、殺気を感じるモノだった。

「ねぇ、竜胆様。ボクは今、アナタにすっごく怒ってます。

 なんで、あんなモノ・・・・・を生かしておくんです?」

「………は?」

 イツキが言った事がすぐに理解できなかった。

 あんなモノ?何を指している?
 ……まさか。

「リュイと呼ばれていた、あの造られた存在。

 ……どうして、助けたんですか?」

 あんなモノと。
 リュイの事を、そう呼んでいる。

「お前、なんで」

「…ユーリスの家で血生臭い事はしたくなかったので、今回は見逃してただけです。」

 そう答えるイツキの表情は笑っている。
 だがその目は、確かに怒りに燃えていた。

 ……あの家の中で見せた行動は、全て演技という事なのだろうか。

「ああ、ボクが人体実験被害者なのは事実です。嘘は言ってません。
 ……ただ、許せないんですよ。造られた存在を、救った事が。」

「それは、どうしてだ?」

「………ボクを見て、わかりませんか?」

 両腕を広げて、そう言うイツキ。

 ……一体、何を言いたいのだろうか。

「すぐにわからないのは仕方ない、か。
 ……まあいいです。では、これから警告しますね。
 いや、宣戦布告…かな?」

 宣戦布告、と聞いて身構える。
 それを見て、イツキは一瞬目を見開いたがすぐに笑みを浮かべた。


「別に神様に逆らうつもりはないですよ。ただ……

 ──あの造られたモノが生きているのが嫌で嫌で仕方がない。
   だから、ボクはいつかあの子を殺します。」

 それは、紛れもない宣戦布告


(オレが幸せを願った子を殺そうとする)


(同じ境遇の筈の人)


(その疑問は尽きなかった)


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