第二話 魔導師と精霊
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イツキがそろそろ帰る、と言うのでユーリスが見送ろうとしたが彼は断った。
…代わりに、何故かオレを指名して来たが。
家の外に出てあと数歩で魔除けの結界の外になる、と言う所でイツキが振り返った。
…その表情は笑っていたが何処か強気で、殺気を感じるモノだった。
「ねぇ、竜胆様。ボクは今、アナタにすっごく怒ってます。
なんで、
「………は?」
イツキが言った事がすぐに理解できなかった。
あんなモノ?何を指している?
……まさか。
「リュイと呼ばれていた、あの造られた存在。
……どうして、助けたんですか?」
あんなモノと。
リュイの事を、そう呼んでいる。
「お前、なんで」
「…ユーリスの家で血生臭い事はしたくなかったので、今回は見逃してただけです。」
そう答えるイツキの表情は笑っている。
だがその目は、確かに怒りに燃えていた。
……あの家の中で見せた行動は、全て演技という事なのだろうか。
「ああ、ボクが人体実験被害者なのは事実です。嘘は言ってません。
……ただ、許せないんですよ。造られた存在を、救った事が。」
「それは、どうしてだ?」
「………ボクを見て、わかりませんか?」
両腕を広げて、そう言うイツキ。
……一体、何を言いたいのだろうか。
「すぐにわからないのは仕方ない、か。
……まあいいです。では、これから警告しますね。
いや、宣戦布告…かな?」
宣戦布告、と聞いて身構える。
それを見て、イツキは一瞬目を見開いたがすぐに笑みを浮かべた。
「別に神様に逆らうつもりはないですよ。ただ……
──あの造られたモノが生きているのが嫌で嫌で仕方がない。
だから、ボクはいつかあの子を殺します。」
それは、紛れもない宣戦布告
(オレが幸せを願った子を殺そうとする)
(同じ境遇の筈の人)
(その疑問は尽きなかった)