第二話 魔導師と精霊
──ユーリスの家
「ただいまー」
「あら、お帰りなさい二人共」
ルナリーフがドアを開けると、にこやかにユーリスが出迎えてくれた。
リュイはどうしているのだろう、とソファの方に視線をやると白い髪の青年が眠るリュイの頭を撫でていた。
ユーリスの知人だろうか、と思っていると青年の赤い眼と視線が合った。
……一瞬。
本当に一瞬だけ、殺気を感じてゾクッと来た。
青年は何事もなかったかのように、ユーリスに視線を向ける。
「ユーリス、その人がさっき話してた人ですか?」
そうよ、と彼女が肯定すると再び青年がこちらに視線を向ける。
……今度は先程感じたような殺気はもうなかった。
にこり、と青年が微笑む。
「はじめまして、ボクはイツキと言います。よろしくお願いしますね、神様」
「……オレのこと神様ってバラすの流行ってんのか?!」
本日二度目ェ!!この精霊主従容赦ねえな!と内心叫んだのは言うまでもない。
隣でルナリーフが腹を抱えて笑ってたのが見えた気がするが見なかったことにしたい!切実に!!
当然、状況が分かっていないイツキはキョトンとしていた。
◇
騎士団に行って情報提供とかをした、とルナリーフが必要最低限にしてユーリスに伝えているのを横目に見ながら、ソファで眠るリュイを見る。
「この子、よく寝てますね」
イツキが起こさないようにそっとリュイの頭を撫でる。
「多分色々あったんだろうな。辛い事も、沢山……。」
「…そうだろうね。ボクも、この子の気持ち、わかるかも」
どういうことだ?と思って隣にいる青年の顔を見る。
イツキは目を細めて何処か遠くを見ている様だった。
「実は…ボクも、人体実験の被害者なんです。
7年前…施設が壊れた時に出てきて……
その時にユーリスに助けられて……。」
「…あ、ユーリスが言ってた知り合いってもしかして」
「多分、ボクの事ですよ。」
そうだったのか。
目の前の青年も、リュイと同じような目に遭ったというのか…。
「……本当に、許せないな」
「ふふ、神様もそう言ってくれるんですね。」
「だって、そうだろ…。こんな目に遭って良い訳が無い」
「ええ、わかります、わかりますよ。」
そう言うイツキは何処か嬉しそうに笑っている。
……何故だろう、それが何かズレたように感じるのは。
「なら、みんな助けないといけないですよね。」
にこやかに答えるイツキの姿が
何故か恐ろしいと感じた。