第二話 魔導師と精霊


「おかしいだろ、そんなの」

「…よかった、君やユーリスが普通の感覚の持ち主で。」

「そりゃどうも。…でも、こんなことをした犯人って、目星とかついてるのか?」

 オレがそう聞くと、ルナリーフは首を横に振る。

「残念だけど、全くと言っていい程わからない。証拠も、何も残さないからね…」

「その辺徹底してる辺り用心深そうだな、そいつ…」

「かもね。でも、手口が基本的に同じだし、そんなに頻繁には見つからないから複数犯ではなさそう、ということまではわかってる感じかな。」

 手口はどうやら、実験施設の完全破壊からの放火、実験を行っていた者達は惨い程切り刻んで殺し、被検体へは基本的に一撃で殺したような痕が残っているらしい。

「被検体まで殺しているワリには、手酷くは殺してないんだな…変なところに情けでもかけてるのか…?」

「さぁ?…あぁ、でも人間とは呼べないレベルに改造された被検体とかも見つかったことがあったね…。抵抗でもしたのかな、そういう者に対しては結構傷が多かったというのも聞いたかな。」

「…そんなレベルになるまでやってるのかよ…最悪だな…。…というか、ルナリーフ、お前、どうしてそんなに詳しいんだ?」

 やけに詳しく答えるモノだから、疑問に思えてきた。いくらユーリスと一緒にこちらの世界にいるとはいえ、ここまで詳しいのはさすがに変だ。

「あー…まだ言ってなかったか。なんというか、個人的に国の衛兵とかにこういった事件の情報提供とかしてるんだよね。人間じゃないから、精霊でないとわからない事とかあるだろ?それを利用して、色々情報を交換してるんだ。」

「個人的に…ってことは、ユーリスには」

「一応は彼女も知ってる。でも、私ほど積極的ではないね。…まあ下手をすれば、今みたいな光景を見ることにもなるんだろうし、それだけは私も避けたいもの…ユーリスだけは、こういうのは見なくていい。」

 そう言ってルナリーフは目を伏せ、祈るように手を組む。
 …いくら彼らが罪を犯したとはいえ、こうも無残に殺され、放置されているのはさすがに思うところがある。オレも精霊と同じように手を組み、祈った。

「…さて、いつまでもこのままという訳にはいかないからね…今回も報告しておこう。それに、葬るにしても、二人じゃさすがに骨が折れるだろ?竜胆、もう一回頼める?」

「さっき言ってた、国の衛兵達の所か?」

「そういうこと。」

 確かにルナリーフの言う通りだ。二人だけで出来るようなこととは思えない。しかも、この精霊は情報の提供もあると言ってるわけだ…何かうまく使われているようにも思えなくもないが、実際にオレもここに居合わせてしまったわけだし、仕方がない。

「わかったよ…。」

 オレが答えると、ルナリーフは少し悪戯っぽい笑みを浮かべて微笑んでいた。

 
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