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第二話 魔導師と精霊

 そうこうしていると、結界らしき気配を感じる。ユーリスの方を見ると「魔除けの結界よ」と教えてくれた。

「そろそろ着くわ。ほら、アレよ」

 指さす先には、確かに家が立っていた。しかし、何故だろう、よく見ていないと木々と植物の中に溶け込んでしまいそうだ。

 ◇

 彼女の家に入ると、本棚がいくつも置かれ、魔術の素材に使うような物が整頓されていた。

「ごめんね、すぐにお茶を出すから」

 座って待ってて、と言ってユーリスは台所の方へ小走りで行ってしまった。
 見回すとすぐそこに椅子とテーブルがあった。ここに座っていればいいのだろうか、と迷っていると、ルナリーフが先に椅子に座っていた。

「座ったら?」

「…なら、遠慮なく」

 椅子に座ると、オレの隣の椅子にリュイが座った。
 リュイはすぐに俯いてしまったが、ルナリーフが「ねえ」と声を掛ける。

「な、なに?」

「随分と怯えてるけど、私達は何もしないぞ?そこの若造と同じみたいなもんさ」

「……」

 恐る恐るというように、顔を上げるリュイ。それを優しい笑顔で見つめるルナリーフ。

「大丈夫だよ、君を傷付けるようなことはしないよ」

 椅子から降り、リュイの近くに駆け寄る。リュイは少し後ずさったが、それ以上は下がらなかった。そして、ルナリーフが手を差し出す。
 彼女の手と顔を交互に見詰め、最後にオレを見た。オレは頷いて「大丈夫だ」と伝えると、こわごわとルナリーフの手に触れた。

「……」

「よし、これからよろしくね、リュイ」

 よしよし、と背伸びをしながら頭をなでるルナリーフ。目を丸くしていたリュイは徐々に警戒を解き、ふにゃりと笑った。

「…仲良くなれたみたいね、ルナリーフ」

 準備が終わったのだろう、お茶と茶菓子を盆に載せているユーリスが立っていた。
 お茶はハーブか何かだろう、いい香りが漂ってきた。

 持ってきたお茶と茶菓子…クッキーのようだ…をテーブルに置く。そのクッキーをリュイはじーっと見詰めている。

 人数分のお茶をカップに注ぎ、配り終えると彼女も椅子に座った。

「さ、どうぞ」

「頂きます」

 カップを手に取り、一口飲む。おいしい。ハーブティーか何かかと思っていたが、柑橘系のような爽やかさもある。
 ふとリュイを見ると、オレがお茶を飲んでいるのを見て…いや、確認するように見ており、何もないとわかるとリュイも自分のカップを手に取り、お茶を飲む。

「…おいしい」

「クッキーも美味しいぞ、リュイ」

 ルナリーフがクッキーを頬張りながら一つをリュイに差し出す。
 オレも一つ頂き、クッキーを食べてみる。…これも美味しい。

「…苦くないよね?」

 その言葉を聞いて、ユーリスが何かに気付いたような表情をしたのを見逃さなかった。
 ルナリーフは首を傾げ、一度クッキーを見てからリュイを見た。

「滅多にユーリスは焦がさないぞ?今日も綺麗に焼けてたし…」

 ほら、とまた差し出す。それを受け取り、一口、小さく齧る。

「甘い…苦くない、おいしい!」

 ぱぁっと嬉しそな表情に変わる。そしてまた一枚、もう一枚とクッキーを頬張っていく。

「お、おいおい…いっぱい食うのはいいが、喉に詰まらせるぞ」

「だって、こんなにおいしいんだもん!」

「そう?そう言ってもらえると私も嬉しいわ」

 まだクッキーはあるからね、とユーリスが言うとリュイは嬉しそうに笑っていた。

 
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