第一話 造られた子

 沈黙。

 腕の中の子は、ただ茫然とオレを見詰めている。オレも何も言わずに見詰め返す。
 暫くそれが続くのだろう。気長に待つか、と思った時、ノインは口を開いた。 

「…私は…僕は……っ」

 震えた声。しかしハッキリとした意思を感じる。

「……生きたい、です。本当は、すごく怖いけど、まだ、死んじゃいけない……そんな気がするんです」

 目に涙を溜め、今にも泣きだしてしまいそうだったが、ノインは堪えていた。それを堪えて、ハッキリと、答えた。

 

 ノインの答えはとてもボンヤリしたモノ。だけどオレには、十分な答えだ。


「そうか。それが、君の答えか」

 自然と頬が緩む。オレが笑ったことが予想外だったのか、ノインは目を丸くする。

「あ、あの……」

「悪かったな。試すような質問をして」

 よしよし、と頭を撫でれば、余程緊張していたのだろう、ぽろぽろと涙が零れ落ちる。


 ――せめて、この子が人並の幸せを知るまでは、傍にいよう


 この子が、かつて時雨オレが“私”だった頃のようにならないように。


 ノインの涙を拭いながら、オレはそんな決意を固めた。

 元“影人”の神の決意


(終わりを選んでしまえば)

(ヒトはもう、“終わり”のままなのだから)


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