第一話 造られた子
*
「あーあ…。またやっちゃたねぇ」
茫然と立っている白髪長髪の青年の近くに金髪赤瞳の少年がニコニコしながら現れ、駆け寄る。
青年の足元には男達「だった」何か。切り刻まれ、既に原型は残っていない。青年の服や手足や顔には血と何かの肉片がついていた。それを煩わしそうに拭い、少年の方を見る。
「またって言われても、こうでもしなきゃボクの気は済まないんだけどなぁ」
にっこりと、血に塗れた顔で青年は笑いかける。他の人が見たら、それがどれだけ悍ましい光景なのだろう。しかし、目の前の少年は特に気にすることなく、笑い返した。
「だろーね!ま、僕は止めないよー。だってアイツら、人間の癖に外道なことしていたもんね!」
「そうですね…。人体実験とか…非人道的ですし。罰は受けて当然、だよね?カイナ」
カイナと呼ばれた少年は目を細めながら微笑み、頷く。
「そうだね、イツキ。人を人の手で改造して、人以上のモノを造り出そうとするなんて…禁忌だよ。それが、君みたいな“犠牲者”を生み出すなんていうのなら、尚更だ。」
イツキと呼ばれた青年は、自分の手に視線を落とす。その手は血に濡れ、彼はそれをぼんやりと見詰めていた。
「ええ。…こんな、“壊れた人間の成り損ない”はボク一人で充分。造られた存在なんて、どうせ――」
最後の方は小さく呟き、カイナにも聞こえなかったのか、首を傾げていた。
が、次の瞬間、顔を上げたかと思うとイツキは白い建物の方に何かを投げ、直後、衝撃と火柱が上がった。カイナは驚いたように目を丸くしていたが、すぐにそれは笑みに変わる。
「ああ、まだまだ残ってたよねー」
今度は僕の番でいいよね、と無邪気な笑顔をしながら、短剣を長い袖からチラつかせる。イツキは小さく頷き、同時にその建物の方へ向かっていった。
◇
「ひ、ひゃあああああ…あ、あれ…?」
ゲートに飛び込み、緩やかに落下していく。ノインが悲鳴を上げていたが、そのスピードが思ったより遅いことに気付いたのだろう、叫ぶのを止める。
ふわり、と着地。着地する瞬間、ノインはギュッと目をつぶっていたが、衝撃も特になかったのを不思議に思ったのだろう、恐る恐る目を開けた。
そこで、この子の目の色に気付く。青と緑という、左右で異なる――オッドアイだ。
…ルーグという(後天的な)オッドアイ持ちがいるので別に左右の目の色が違うことに驚いた訳ではない。
ただ、宝石のように綺麗な目をしている。そう感じていた。
「……あの大丈夫、ですか?」
思わずオレが固まっていると、キョトンとした表情で声をかけられる。
「おっと…悪い、ぼーっとしてた。」
「それとここは……?」
ノインが周囲を見渡し、息を呑む音が聞こえた。
――周囲にあるのは、森と湖。空には星が輝き、満月がオレ達を照らしている。
この場所にいると、落ち着くし、力が湧いてくる。…それもそうだ。なんせ此処は――
「〝月影ノ神域〟――オレの神域だ」
「え?」
腕の中の子が目を丸くし、固まる。同時にオレは頭を抱えたくなった。なんで言っちゃったかな…自分の神域だって…。いや、間違ってはいない、間違ってはいないけども…!!
「あー…いや、その「つまりお兄さんは神様ってこと?」……」
何処か不安そうな瞳に見詰められ、オレは言葉に詰まる。
というのも、自分が“神”であるということにまだ自覚がないからだ。…一応正式に神体になった訳だし、嘘ではない。嘘ではないのだけれど―――
(5000年もの間、自称“影人”の人外だったからな、オレは……)
今までそう名乗って来た。だからこそ、にわかにオレが“神”であるという自覚が出来ていない。
「あーあ…。またやっちゃたねぇ」
茫然と立っている白髪長髪の青年の近くに金髪赤瞳の少年がニコニコしながら現れ、駆け寄る。
青年の足元には男達「だった」何か。切り刻まれ、既に原型は残っていない。青年の服や手足や顔には血と何かの肉片がついていた。それを煩わしそうに拭い、少年の方を見る。
「またって言われても、こうでもしなきゃボクの気は済まないんだけどなぁ」
にっこりと、血に塗れた顔で青年は笑いかける。他の人が見たら、それがどれだけ悍ましい光景なのだろう。しかし、目の前の少年は特に気にすることなく、笑い返した。
「だろーね!ま、僕は止めないよー。だってアイツら、人間の癖に外道なことしていたもんね!」
「そうですね…。人体実験とか…非人道的ですし。罰は受けて当然、だよね?カイナ」
カイナと呼ばれた少年は目を細めながら微笑み、頷く。
「そうだね、イツキ。人を人の手で改造して、人以上のモノを造り出そうとするなんて…禁忌だよ。それが、君みたいな“犠牲者”を生み出すなんていうのなら、尚更だ。」
イツキと呼ばれた青年は、自分の手に視線を落とす。その手は血に濡れ、彼はそれをぼんやりと見詰めていた。
「ええ。…こんな、“壊れた人間の成り損ない”はボク一人で充分。造られた存在なんて、どうせ――」
最後の方は小さく呟き、カイナにも聞こえなかったのか、首を傾げていた。
が、次の瞬間、顔を上げたかと思うとイツキは白い建物の方に何かを投げ、直後、衝撃と火柱が上がった。カイナは驚いたように目を丸くしていたが、すぐにそれは笑みに変わる。
「ああ、まだまだ残ってたよねー」
今度は僕の番でいいよね、と無邪気な笑顔をしながら、短剣を長い袖からチラつかせる。イツキは小さく頷き、同時にその建物の方へ向かっていった。
◇
「ひ、ひゃあああああ…あ、あれ…?」
ゲートに飛び込み、緩やかに落下していく。ノインが悲鳴を上げていたが、そのスピードが思ったより遅いことに気付いたのだろう、叫ぶのを止める。
ふわり、と着地。着地する瞬間、ノインはギュッと目をつぶっていたが、衝撃も特になかったのを不思議に思ったのだろう、恐る恐る目を開けた。
そこで、この子の目の色に気付く。青と緑という、左右で異なる――オッドアイだ。
…ルーグという(後天的な)オッドアイ持ちがいるので別に左右の目の色が違うことに驚いた訳ではない。
ただ、宝石のように綺麗な目をしている。そう感じていた。
「……あの大丈夫、ですか?」
思わずオレが固まっていると、キョトンとした表情で声をかけられる。
「おっと…悪い、ぼーっとしてた。」
「それとここは……?」
ノインが周囲を見渡し、息を呑む音が聞こえた。
――周囲にあるのは、森と湖。空には星が輝き、満月がオレ達を照らしている。
この場所にいると、落ち着くし、力が湧いてくる。…それもそうだ。なんせ此処は――
「〝月影ノ神域〟――オレの神域だ」
「え?」
腕の中の子が目を丸くし、固まる。同時にオレは頭を抱えたくなった。なんで言っちゃったかな…自分の神域だって…。いや、間違ってはいない、間違ってはいないけども…!!
「あー…いや、その「つまりお兄さんは神様ってこと?」……」
何処か不安そうな瞳に見詰められ、オレは言葉に詰まる。
というのも、自分が“神”であるということにまだ自覚がないからだ。…一応正式に神体になった訳だし、嘘ではない。嘘ではないのだけれど―――
(5000年もの間、自称“影人”の人外だったからな、オレは……)
今までそう名乗って来た。だからこそ、にわかにオレが“神”であるという自覚が出来ていない。