もうどうしたらいいのさ……こんな場所、誰かに連絡なんて取れそうにも…

 連絡…?

 ハッと、携帯の存在を思い出した。
 ポケットを漁るとスマホは出てきた。
 ………でもまぁ、こういうオカルト的展開のお約束として……

「まぁ、繋がらないよねぇ……知ってた…」

 無情にも表示される圏外の文字。予想通りではあったけど、いざ目の当たりにするとやっぱりショックだ。
 ……それと同時に違和感も感じる。

 確か、あの道に入る前…というか、散歩にいこうとした直前にスマホを開いていたのを覚えている。
 その時はまだ18時にはなってなかった。…多分、17時57分とかそういう時間だったと思う。
 ここに来てから5分以上…多分10分くらいは経ったはずだ。
 なのに、スマホの時計は18時3分のまま止まっている。
 体感からしてそこまで時間がかかってないのかもしれないが、こうして1分以上スマホを眺めていても時計は18時3分から動かない。しかも、バッテリーだけは減っていく。

「はは……シャレにならないんだけど、コレ」

 連絡出来ない、時計も止まっている。
 ……オカルト的展開としては十分過ぎませんかね!?

 万が一電波が届く事が起きた時の為に電源を落としてポケットに仕舞う。

 …さて、どうした物か。

 改めて籬が並ぶ通りを見渡す。
 …見渡して気付いてしまった。

 籬はショウウィンドウのような物。
 …なのに、その中身が真っ黒で見えない。
 その暗闇から手だけが格子を掴んでいたり、此方へ手招きをしている。…なんなら、その手の色が明らかに人間の肌の色をしていない。黒かったり、緑っぽかったり……。

「おーう………今度は人間じゃないのが売られてるって事…??」

 思わず数歩後退る。
 正直もう勘弁して……というのが本音だ。元の場所に帰りたい…。
 なんて思いながらまた数歩下がった時。

 ぐいっとパーカーのフードを掴まれた。

「ぐえっ」

 フードだけじゃなくシャツの方まで掴まれてる為、首が締まりそうになる。慌ててこちらもシャツを掴んで引っ張る。
 その瞬間、強い力で後ろに引っ張られた。

「ちょっ……まっ…!?」

 何が起きてる!?あ、もしかして数歩下がった時、籬に近寄っちゃって…そこから伸びてる手にタゲられた!?
 
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