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 何が起きたのか理解が出来ない。

(お、落ち着こうボク。こういう時はまず落ち着く事が大事だ…!)

 落ち着け、落ち着けと自分に何度も言い聞かせながら深呼吸を繰り返す。
 ……うん、少しだけ落ち着いた…気がする。
 
 改めて、街を見渡す。

 建物は日本家屋なのは間違いなさそうだ。だけど、時代的には…少し古めかしいように感じる。
 何と言うか…昭和とか、大正とか…そういった感じの雰囲気だ。少なくともオリジナルやボクが居た2020年代に見かける現代な建物は見当たらない。
 そして今いる場所は店が立ち並ぶ通りの様だ。看板などの文字は…何とか読めそうだ。

(甘味処、呉服屋、エトセトラ……うーん商店街的な所かな…?)

 …ただ、中には何だか不気味で物騒な店の名前や商品もある気がするんだけど…。
 例えば……肉饂飩屋と書かれた看板。メニューと思われるポスターにはどう見ても人間の腸が丼に入ってる絵なんですけど!?
 それ以外にも団子屋には目玉が団子の様に刺さってるのが売られてるし!?

(……っというか…!)

 夕焼け空で辺りが暗くてあまりわからなかったが、よく見ると街の中を黒い影が沢山歩いている。
 しかも、その影は店の中に入ったり買い物したりしているし…!

(少なくともココ、人間が来てはいけない場所だなコレ!!!)

 それだけは確信出来た。

 ……そしてアルターエゴでもある為か、今のところボクはその黒い影達から見事にスルーされていた。

(どう見ても浮いてるのにね!でも正直スルーされるのはすごく有り難いね!!)

 なんて思った矢先だった。

『何処からカ人間の匂いがスるなァ』

『薄イが、人間が迷い込ンだのかモしれんなァ』

 ざわざわと、黒い影達がそんな事を言いだした。

 サーッと血の気が引く感覚。
 あ、この場にいるのはマズい、と直感する。
 
 だから、がむしゃらに走り出した。

 黒い影にぶつからないように避けながら走って、走って、走って。
 出来るならうっかり黒い影に出会わないようにと祈って、道を曲がって、曲がって、曲がって。

 ──今度は人通り(?)が少ない所に出た。

 黒い影は殆ど見当たらない。ホッとしたのも束の間、立ち並ぶ店を見てギョッとする。

「え……っと、確かこれって、まがきだよね…?」

 遊郭などにあったとされる籬……所謂「女性のショウウィンドウ」とも言われる格子が並んでいる。

 逃げた先、今度は何処か如何わしい雰囲気の店が立ち並ん出る所に出るとはどういう事だーーー!!?

「つ、ツイてないにも程がある……!」

 思わず頭を抱える。


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