弐
──一方その頃、コンパス
「子分!何処だーーー!!!」
「おチビ!居たら返事してくれ!」
コンパスの内部を駆け回る影が二つ。
一人は白髪褐色肌の盗賊風の青年、アル・ダハブ=アルカティア
もう一人は白いスーツと着物を羽織った男装の麗人、鬼ヶ式うら
彼らは、アルタの所のヒーローだ。
「クソッ…!本当に何処に行っちまったんだよ子分…!」
アルタが居なくなってから数分後、何処を探しても彼女の姿が見当たらないと気づいた二人がコンパス中を探し回っていた。
「おチビから目を離してしまった私にも非がある。だが、何故こんなに探しても見つからない…?」
二人は首を傾げる。
「かくれんぼ、ってわけじゃないしなァ…。」
アルが言った「かくれんぼ」と聞いてうらは何か思う事があったのか、少し考え込む。
「それにこんな時間だ。……この時間でそんな事をしたら、“迷い込んで”しまうだろうな」
うらの言い方に疑問を感じたのだろうか。アルは「迷い込む?」と聞き返す。
「逢魔が時。他界と現実を繋ぐ時間の境目。
…日本では昔からそういう風に信じられていてね。今まさに、その時間帯であるんだ」
「…まさか、子分は」
「あくまでも可能性の話だ。だが、こんなに探しても見つからないとなると、本当に…?」
もしそうだとしたら、迷い込んでしまった先は恐らく異界。
……早急に見つけ出さないと、まずい事になる。
幾つもある
とはいえ、実はコンパス内部にまだいる可能性も完全には捨てきれない。
ならば、もう一度二手に分かれるべきだな、とうらは考えた。
「アル、そちらはもう一度コンパス内部を探してもらえないだろうか」
彼女の意図を察したのだろうか、アルは頷いた。
「わかった。まぁ、ある意味その手の専門家はアンタの方が適してるだろうし。こっちは俺に任せろってなぁ!」
そう言って、彼は来た道を戻ってアルタ捜索へ向かう。
アルの姿が見えなくなったのを確認すると、壁に手を触れる。
…何かを確信したのか、数歩下がった。
「……さて。」
バトルでも使う扇子を開き、
壁に貼り付くや否や、拒絶するように御札が弾き返された。
「どうやら此処に入口があったのは間違いなさそうだ。
……完全に閉じられてしまっているが。」
──その場所は、確かにアルタが姿を消した場所だった。