神様のいる世界
目の前にいる黒髪の人がボクを睨み付ける。
「お前、人間だろ。」
「え、あ…はい。まぁ…人間だけど…」
そう答えると、ボクを見つめる紅い瞳が細くなる。
「…まぁ、それ以外の“何か”も感じなくないが、な。」
何だか意味深なことを呟いた。…というか、もしかして…見抜かれた?
「?…あの、君は…」
ボクが聞いてみると、その人はしばらく考える素振りを見せた。そして
「時雨。」
と短く名乗った。
「それで、アンタは?」
「あ、ボクはイツキです」
「ふーん…イツキ、ねぇ…」
そう言うと再び時雨は考え込む。
その間、ボクは改めて周囲を見渡した。
空は美しいほど青く、澄み渡っている。そして、空気と同じように漂う神聖な感じ。…この時点で異世界ということはわかった。けれど…何だろう。
(今まで飛ばされた異世界と何か違うような…?)
何かが違う。それは何なのか……本来あるべき物がなくて、欠けているように思える。
チラリと時雨を見る。…やっぱり、この人からも"何かが違う"と直感的に感じる。
「なぁイツキ。お前はどうやって“ここ”に来た?」
「え?」
どうやって…“来た”かぁ…。いつもなら都合のいい嘘を吐いたりするけれど、何故かこの人には嘘は通じないだろうと何となく思った。
さて、そうだとしたら……直前にしていたことになるかな。
「うーん…確か、うたた寝していたかな。」
「はぁ?」
「多分、その間に“飛ばされた”んだと思います。」
「………」
確かに正直に答えた。そのせいか時雨はポカーンとしていた。…まぁ、そうなっちゃうよね…うん。
それにしても、今回も酷いなぁ…ミイヤは。
最近異世界に飛ばす時、ワリとボクが寝ている時が多い気がする。だから目が覚めたら異世界でしたー…なんてことが既に過去数回経験している。…まったく、何が楽しくてそうしているのやら…。