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少年と少女と御曹司


「……ん?」

 今、視界の端で何かが動いたような…?

 ルーファやダイゴさん、対戦相手の空手王の男ではない。気配からして野生のポケモンとは違う。

 チラリとセリアと(まだいた)メタグロスを見る。

「……セリア、メタグロス、なんかいる…よな?」

《いますね。メタグロスもそう言ってます。…恐らくこのバトルは不正がある、そう思います。》

 不正?


「(まさか、第三者が関わっている…的な?)」

 小声でそう言うとセリアとメタグロスは頷いた。

 じゃあ、このバトルは……!


《出来るだけその人物に悟られないようにしながら探しましょう、タクト》

「(…だな。)」

 セリアのテレパシーに頷きながら、辺りを見回す。

 ルーファはというと、相変わらずの強さ。だが……

「ラグハ、濁流!」

 ラグハの"濁流"がチャーレムに当たる……と思ったら。

「えっ!?」

「!」

 当たらない。確かに当たっているが直接チャーレムに当たってっていなかった。何かバリアのような物が見える。確か…

「あれは…ワイドガード?」

 何故、と思っていればチャーレムは"冷凍パンチ"を繰り出した。

 おかしい。明らかにおかしい。あの"ワイドガード"はやっぱり……


(早く見つけねぇと…!)

 そう簡単にルーファは負けないと思う。でも、相手は(恐らく高確率で)不正な戦い方をしてきている。下手すりゃそれが原因で負けるかもしれない。

 しかも物を賭けている。相手はメガ石をと言っているが、不正をしてくる辺りメガ石だけじゃなくキーストーンも狙いそうだ。最悪、勝ったついでとか言ってさ。


(だったら尚更早く見つけねぇとっ!)

《タクト、上です。対戦相手より左上のフロア!》

「なんだと…!」

 確かにセリアの言う通り、上のフロアからこちらを見ているヤツがいるのが何となくわかった。

「…アイツか!」

 帽子を目深に被り、精神を高める。

 正直、こんな事でこの「能力」は使いたくない。

(でも今は……仕方ないんだよッ!)

 自分の中で何かが弾けたような感覚。同時に力が湧いてきた。

「じゃ……さくっと行くぜ。」

 セリアをボールに戻し、地面を蹴り上げた。

 風景が一瞬にして流れ、セリアが言っていた場所に着地。

 案の定、サイキッカーの男とママンボウがいた。


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