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05 幕間 死神サマと人


 彼の口から出てきた言葉は意外なことだった。

「……へぇ。わかるんだ、【君】」

「そりゃー俺、腐っても死神だ~しィ?」

 お道化る様に肩を竦め、口元のマスクに「笑み」を作る。
 …そのマスクの下の本当の表情は、わからないが。

 …さて、彼がいう【本来ここの世界線の僕】はどうなっているのだろうか、とふと思った。
 この世界線の【僕】は居なかった。それに、デルミンの様子からして、外へ出ているのは間違いない……──

(廃棄所……それにアハトの「“また”来たのか」という発言)

 ……恐らく、あの廃棄所に沈んでいた【我々】の中に、【この世界線の僕】も沈んでいるんじゃないか?

 つまり、【この世界線の僕我々】も、失敗したのだろう。


「──【僕達】は何度失敗すればいいのだろう」

「知らねーよ、ンなもん」

 思わず口に出していたらしく、13が興味無さそうに答えた。

「まあ、最近の相棒の様子が可笑しくなったのも考えると、お前がそれをどーにかしようとしてんのは予想が付く。……でも、その様子だと、どうにもならなかったみてぇだけどな」

 トントン、と【僕】の額をつつきながら目の前の死神は語る。

 …そう言えば、彼もまたヒサメを好いている。
 ある意味では【僕】と彼は「恋敵」とも言える関係でもあった。
 それを思い出してハッとする。

 ……どの世界線の13は、何もしていないということを。

 あの子を好いていながら、何もしない。
 死ぬのにあと何日なのか、とかを答えてくれるだけで

 彼自身は【僕】のように「彼女を救おう」とする行動を起こしていない。

「…そう、だね。でも13、【君】は何もしていないよね?
 ──【あの子】を好いていながら、【君】は何もしていない。それは何故だい?」

 ぴくり、と彼の肩が揺れる。赤い目がこちらを見た。
 …目元だけの表情も、うまく読み取れない。

「俺様もさァ、確かに相棒の事は好きだぜ?あんな事やこんな事もしてみてぇな~とは思ったりするけど、ヒサメ自身は零夜が好きみてぇだからよー、しゃーねーなぁと思いながら譲ってんだわ、俺」

「…そう言うワリには、チョッカイやら色々とやっていると思うけどね」

「なーんの事デスカネ。でもな?普段ここまで譲ってやってんだからよぉ……
 ──最期くらいは、俺に寄越してくれたっていいじゃねぇか、な?」

 ニコリ、と口元のマスクが「笑み」を浮かべた。
 しかし、目はそこまで笑っていない。まるで、得物を狙う捕食者の目だ。

 
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