04 #THE END
【警告】
流血・死ネタです
一応読まなくても何とかなります。
途切れた【僕】を発見した 先はない、あるのは過去という【記録/記憶】だけ ──それでも視るのかい? 【チャネリング開始_並行存在:case??/LOST】 : 初めは、別の世界線へ移動して、この結果を無かったことにしていた。 その度に、ヒサメは死んでいく。 この世界線も、彼女は戻ってこなかった。 それなら、望む世界線へ移動するだけ …そんな風に、簡単なことだったはずなのに。 【僕】が移動した先の世界線、その全てで彼女は死ぬ。 いくらなんでもおかしい。 何かがおかしい、絶対に何かがある。 だから調べることにした。 :: わかったこと ヒサメのいる例の実験施設が絡んでいるようだ。 そこへ行ったきり、帰ってこなかった世界線はいくつかあった。 実験施設で何かをされているのには間違いないだろう。 もう少し確認する必要がある。 ::: 何かしらの投薬実験をされているようだ。 薬は通称H・Mと呼ばれるもの。 …否、薬とは呼べない、アレはただの殺人ウイルスだ。 他のホムンクルス達もそれによって殺されていたらしい。 彼女もそれに巻き込まれてしまったというのだろう。 ……どうにかして、それを回避出来ないだろうか。 :::: 数日間、連絡手段になる物を取り上げて彼女を監禁でもしてみればどうにかなるんじゃないかと思ったが、そこまですると他のヒーロー達から何か言われてしまうだろう。 …仮に隠したとして、13やデルミン辺りが探しに来る。 対峙したら厄介だ。…今の関係は、それなりに悪くないからね。それをむざむざ壊す程【僕】は愚かではない。 ……それに、ヒサメから自由を奪いたくはない。 ::::: 【僕】が何かを調べているのかを、ヒサメに知られてしまった。 しまった、と思ったが、彼女も彼女で他のホムンクルス達が次々と死んでいくことに怯えながらも、この出来事の異常さに疑問を抱いていたようだ。 ……仕方がない、知られてしまった以上は、一緒に行動しよう。 「これ以上の犠牲を出さない為に」 :::::: 「ねぇ、もし今すぐに他の世界線へ【君】を連れて逃げたら…きっとそうすれば、ヒサメは死ななくて済むんだ。…【僕】と一緒に来ないかい?」 「………確かに、私は死にたくはないよ。でも……他のホムンクルス達は、助からないというのは、なんか、嫌だな」 …と、困ったように笑いながら断られてしまった。 …他の世界線にヒサメを連れて逃げる、という選択肢は最終手段ということにしよう。 ::::::: 極力、彼女を実験施設には行かせないようにしていたが、強制呼び出しをされてしまった。 ヒサメはどうしよう、と困っていた。 行かなければ、酷い罰を受けるかもしれない、と怯えている。 もしかしたら、【僕】達ヒーローにも影響が及ぶかもしれないとも言われてしまった。 ……そう言われて泣きつかれてしまった。…仕方がない、【僕】が一緒に行こう。 近くに居れば、助けられるかもしれない。 :::::::: ──結論から言えば、この世界線でも【僕】は失敗した。 アハトとかいう研究者がヒサメに薬を投与した。 目の前でヒサメは苦しんでいる。血を、いっぱい吐いて、呼吸が小さくなっていく。 「ゃ…だ………」 しにたくない、と唇が動いたのが見えた。 ごめんなさい、れいや、と唇が動いたのが見えた。 「なんで、【君】が謝るんだい…?」 【君】は悪くないのに、どうして。 何度【君】は死ねばいいのだろう。 ──【僕】が目を逸らしてきた数も、含めて。 そうしたら、【僕】の方がもっと酷いことをしてきたようなものだ。 「だから、【君】は悪くない、悪くないんだよ、ヒサメ。」 そっと抱いて、頭を撫で続ける。安心したのだろうか、眠るように息を引き取った。 ……最期の瞬間に、苦しまなかっただけ、まだマシなのだろうか。 「いいモノを見せてもらったよ、零夜」 「こんな悪趣味な見世物、あってたまるか」 「ハハッ…なら、お前もその実験動物の後を追えばいい」 何を、と言い切る前に、首元にチクリと、痛みを感じた。 「ほぼ完成してるH・Mを人間にやるのは初めてだからな、お前が実験台になれ」 ニヤリ、と笑みを浮かべるアハト。 例のウイルスが全身に回っていく感覚。 【僕】という人間が壊されていく。 「……何処まで外道なんだ、【君】は…!ゲホッ…カハッ」 咳が出たと思えば、急に呼吸が苦しくなる。何かがこみ上げてきて、吐き出せば、それは血の塊だった。 嗚呼、先程まで苦しんでいたヒサメと同じだ。 こんな状態じゃ、別の世界線に逃げたところで生き延びれるとは思えない。 ──どうやら、【僕】はここで死ぬらしい。 死ぬというのに、【僕】の頭はやけに冷静だった。 …別の世界線に別の【僕】がいるから、という確信があるからだろうか? ああ、でも。別の世界の【僕】も、同じような目に遭うのは嫌だなぁ。どうか、こんな風に犠牲になるのは、この僕だけにして欲しい。 だんだん霞んできた視界を動かし、ヒサメの方へ向け、彼女の手を握った。まだ、温かい。 嗚呼。願わくば── (【僕】とヒサメが、 ──最も真実に近づき、失敗した【僕】の記憶 【チャネリング終了】 |