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04 #THE END


 ◇

 アハトの研究室を出て、その後を着いて行く。

 数分して辿り着いた部屋には「廃棄所」と書かれていた。

「なんで、廃棄所…」

 ミコトの表情が強張る。イツキは何も言わず、ただ前を見ているだけだ。
 …この部屋に入れて、何をするつもりなのだろうか。警戒していると、アハトはそのドアを開けた。

「入れ」

 先にアハトが入り、その後に【僕】達も続く。



 廃棄所。

 コンクリート打ちっ放しの殺風景な部屋だ。前方に大きな穴があり、そこに廃棄処分する何かを入れるのだろう。

 変な異臭もなく、代わりに薬品の匂いが鼻を突いた。

「残念ながら、俺には零夜程の観測力はない。精々3週間前後だ。でもそれだけあれば十分だった。…何故だかわかるか?」

「…さっき言ってた【僕達我々】が何度も、この日に君を殺しに来るからかい?」

 【僕】が答えるとアハトは正解だ、とニコリと笑った。

「お前はそんなにあの実験動物にご執心なのか?ここ数日の間に俺を殺せば死なない、と思い込んでるらしいな」

 実験動物、とあの子の事を称する。それにイラッと来たが抑える。

「でも無駄だよ。お前に俺は殺せない。全部お見通しだからな」

「……【観測結果】が必ずしも毎回同じとは限らないよ。」

「ハハッ それはそうだな。前に来たお前も同じことを言っていたが……コレを見ても同じことを言えるかい?」

 そう言ってアハトは穴の方を指差す。

「卑怯なことはしないさ。ただ、コレを見るだけでいい。そこのホムンクルス達もみるといい」

 一体何があるというのだろう。
 廃棄所、というだけあってホムンクルス達の遺体でも破棄しているのだろうか、と胸糞悪くなる考えをしながら近づいていく。

 ──案の定、と言うべきか。見覚えのある実験着を着ているホムンクルスも居れば体をバラバラにされたホムンクルスもいる。無残な姿にされたホムンクルスの遺体が幾つも、沈んでいた。
 腐臭を防ぐ為なのだろう。何らかの液体の中に沈められている。

「……あ」

 その中に、見覚えのある色を見つける。

 黒とライトグリーンの服。
 白い肌と黒い髪。
 08とMMMのマーク。

 紛れもない【僕】が、何人も沈んでいる。


「は…!?零夜、なんで!?」

「ここにいるのは幽霊、という訳ではないよ。」

「想像以上に冷静な返しィ!」

 軽口を叩いているが、ミコトが色々と何やら言いたそうな表情をしている。
 …正直、驚いてはいる。けれど即席で【観測】した世界の【僕達我々】の末路を考えれば当然の結果ではあるだろう。
 ……ショックを受けていない、という訳ではないが。

「つまりこれだけ【僕達我々】は選択を誤り、失敗している訳なんだね」

 視線をアハトの方に向け、睨みつける。

「……何だその目は。つまらない反応だな」

 面白くない、とでも言いたげな目でアハトが吐き捨てるように言う。

「思い通りの反応じゃなくて残念だったね。」

「別の世界線の自分の死体を見て、何も思わないのか?」

「そういう訳ではないさ。確かにショックは受けてるよ。ただ…もう間違えるわけにはいかない、とは思うけれどね」

 だからこそ、失敗は許されない。改めて覚悟を決めた。
 そう答えれば、アハトは「つまらないな」と呟き、【僕】の額に冷たく硬い何かを突き付けた。

 ああこれ、拳銃か。
 と、何処か他人事のように考えながら、目の前の男を睨んだ。

「零夜、」
 
「動くな。動けばコイツの頭に風穴が開くぞ?」

 今にも飛び掛かりそうだったイツキの動きが止まる。

「ここは〝摂理〟世界コンパスではない。ここで俺が引き金を引けばお前の頭に銃弾が当たり、死ぬだろう。…ま、運が良ければ死なないかもしれんがな?」

 癪ではあるが、アハトの言う通りではある。
 〝摂理〟世界コンパスの世界での死は、あのキューブ状にされて、再びリスポーンする。疑似的な不死、とも捉えられなくもない…そんな所だろう。
 とはいえ、それでも痛みは感じるのだが。

 だが、今いる場所はコンパスの外。ここでの死は文字通り「死ぬ」事へ繋がるわけであり……。

「…また、失敗ということになるのか」
 
「その通りだ。お前の思い通りにはならんぞ、零夜」

 そう言って、男は拳銃の引き金を引いた。

 
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