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04 #THE END


 ───

 ホムンクルス達の異常な回復力。これを上回る速度で細胞を破壊していくウイルスを作ったらどうなるのだろうか。

 ウイルスが破壊する速度の方が先か。
 ホムンクルスの治癒能力が先か。

 いずれやっていけば、進化してウイルスが負ける日は来るだろう。




 丁度よさげな実験体が手に入った。
 コイツに試してみよう。



 ───

 深く、息を吐き、意味もなく天井を見上げる。

「信じらんない………」

 先程イツキを煽る為に言った「人体実験とかそういうのに手を出してる輩は何もかもまともじゃねー」という言葉が深く自分に突き刺さる。

 想像以上に、クズだった。

 コイツは……自分の欲の為に実験を行っている。

 誰かの為に、ではない。

 この言動は、知識欲からなのだろうか、人間では倫理的にアウトなので近しいカタチをしているホムンクルスでそれを行おうとしている。

「ミコト、何かあったのかい?」

「あったけど…すげー胸糞内容だよ、コレ」

 そう言って零夜にルーズリーフを手渡した。
 案の定、零夜の表情が険しくなっていく。
 と、思っているとクシャリと持っていた部分を握り潰した。

「…なんだい、これは」

「酷いよね。…私らもさ、人工的に作られたルシェクローン存在をよく知ってるからさ…こういう言い回しするヤツは許せないわ」

 ホムンクルスを実験動物と称し、ぞんざいな扱いをしようとしている。
 下手すりゃ実験用のラット以上に雑に扱おうとしていないか…?と思う程だ。なんだろう、奴隷か何かとでも考えているんじゃないのか、コイツは。

「…まぁ、確かにさ、ホムンクルスに人権があるかどうかって言われると複雑で厄介な問題が起きるんだろうけど…私は人間と同じように考えることが出来て、感情がある人に似て非なるホムンクルス達に人権はいるんじゃないかなぁとは思うよ。」

 こちらの実験体ルートのヒサメや、そうでない方の世界線のヒサメを思い出す。
 (実験体ルートのヒサメはちょっと表情が薄いとはいえ)ほとんど、私達と変わらない。時に怒り、時に泣き、笑い合うことが出来る、人間と同じように思考することが出来る彼女の姿は……人間とほとんど同じだ。

 …ムラクモ機関で私ら13班をナビをしてくれたあの双子も人工生命体だし、2021年で造られたルシェクローン達もまた同じだ。
 ルシェ族という異なる種族でもあるが、あの子達も私達とほとんど変わらなかった。

 ただまぁ、造られたが故に存在理由について悩むということをしていたという話も何処かで聞いたけれども。

「人工的に造られた存在だからと言って、人間とは絶対に違うと決めつけて、ぞんざいに扱う人間の方が、可笑しいと思うな。…まぁ、だから、私からすれば人工的に造られたホムンクルス達も私ら人間とほとんど変わらない存在と思ってるよ。」

 資料を読んでから険しい表情をしていた零夜が、少しだけ表情を緩めた。

「【僕】も、あの子が……ヒサメが人間とほとんど変わらない、ホムンクルスであるということを忘れるくらい『人間らしい』と思っているからね。…本当に、これを書いた研究者へ怒りの感情が湧いてくるよ」

「うん。だからこそ……コイツは──アハトは絶対に許しちゃいけねーってワケだ」

 人間でやるには気が引けるから、ホムンクルスという実験動物で行う、という思考がある意味イカれているように思える。
 そもそも、「投薬の実験」と称している時点でもう駄目なんだよなぁ…
 「治験」なら自らの意思で臨床実験を受けるというモノ。
 一応、受けるかどうかの意思確認はしているようだが、最終的にはホムンクルス達の意思関係なくやっていそうな気がする。


「………」


 今、私──何を考えた?


「治験ではなくて、投薬実験……」

 あれ、これってもしかして

「あの連絡を受け取った時点で、参加不参加の意思は完全に無視して、もう参加は確定されている──?」

「なん、だって……?」

 思ったことを口にした所為で、零夜が困惑の表情を浮かべている。

「ごめん、今のは最悪のパターンという憶測…だから…」

 気にしないで、と言いながら自分の口を手で覆う。
 ……これ以上、口に出さないように、と。

 さっきから最悪の憶測ばかりが浮かぶ。

 悪い方、悪い方へと考える過ぎるのもよくない。…一度この考えはやめておこう、として頭を横に振った。

「……不参加の意思表明がされてるホムンクルスの資料があるんだけどね。…今日の日付から10日後に亡くなったホムンクルスと同じ名前だ。」

「……え」

 恐る恐る、零夜の方を見る。
 零夜はホムンクルス達の資料がまとめられているファイルをもう一度開いていた。

 
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