04 #THE END
パソコンをベッドの上に置き、机の方へ向かう。
何があったの、言おうとして引き出しの中身を見て──絶句した。
「…わかるよ。【僕】もこれを見つけた時、何も言えなかったから」
引き出しの中身。そこには
「投薬実験への参加」を促す紙がいくつも入っていた。
いくつもいくつも。
何だよコレ
日付は全部違う。
気味が悪い
名前はやはりアハト。
おかしいでしょ…
ここに入っていたのは控えの部分だろうか、控えの部分にも「不参加」にマルが付けられている。
「……ひっ」
──気味が悪い。吐き気がする。
思わず座り込んでしまった。
*
──こんな場所、さっさと壊してしまえばいい。
そんな気持ちを抑えながら、ドアの外へ気配がないか注意を向ける。
『…おーっと、みーちゃん
「え」
不意に聞こえてきたミイヤの声で我に返る。部屋の方に目を向けると、ミコトが座り込み、零夜が背中を擦っているのが見えた。
「ミコト…!?」
「っ…大丈夫、吐いてはないから、ちょっと気持ち悪くなっただけだし」
そう言ってへらっと笑いかけてくるが、その顔色は真っ青だ。
いくら人間性がズレまくっているボクでもわかる。どう見ても、大丈夫ではない。
「ミコトは休んで。…ボクが、探しますから」
「多分他にも気分を害するようなモノは出てくるかもしれないからね。休んでおいた方がいい」
「……うん、頼むわ」
ボクと零夜に言われ、大人しくベッドに背を預けて膝を抱え込みながら座り込んだ。
「…で、何が入ってたんです?」
「投薬実験への参加を促す手紙、とでも言うべきかな。それが毎日来ていたらしい。」
「成る程」
「さらに同じ内容のメールが毎日来ていた。…気味が悪いよね、毎回『参加しない』と答えているハズなのに…
「気味悪いというか、イカれてますね、送り主の研究者は」
思ったことをストレートに言う。
きっとヒサメからしたら「答えは全部【No】」と言っているのに「【Yes】と言う」まで送り続けるとか、どんな精神しているのだろう。
とてもじゃないが、イカれている、としか思えない。
「随分バッサリ言ったね…。気持ちはよくわかるけど」
「そりゃこんなの見たら気味が悪いってなりますよ。ボクだってゾッとしてるのに…」
まぁ、確かにゾッとしたが、それ以上に「送り主の研究者、イカれ野郎だな」という感想の方が強いけれども。
「しかし、メールといい手紙といい、何度も送ってきている辺り…意地でもヒサメを狙っているように思えますね。」
ふと、予測を立ててみる。
零夜の方を見ると、怪訝そうにこちらを見ていた。
「と言うと?」
「実験体が優秀故に執着するというのは珍しくはないです。その一方で失敗すれば失う可能性もあるので積極的に使うことを避けるタイプも居た様な気もしなくないです。或いは……──」
実際、ヒサメが優秀なホムンクルスなのかどうかはよくわからない。よくわからないが……。
どちらかというと、このやり方は……──
「何が何でも、ヒサメをこの実験に参加させなければ、意味がない。ただそれだけで動いてる。」
「何の、為に?」
「理由はさすがにわかりません。その研究者のみぞ知る、という所でしょうか」
まぁ…きっと良からぬモノというのは間違いないだろうけれど。