04 #THE END


 あまりにも気味悪いメールを見て少しだけ怖くなり、思わずパソコンをパタンと閉じた。
 そっ閉じだよ、こんなの…。

「何だろう、この……相手の執念…」

「ヒサメが『参加する』と答えるまでずっと送り続けてそうだね…」

「つまり相手の選択肢的には『はいorYes』しか求めていないと…?」

 うーん…ちょっと頭痛くなってきた。

「怖いわー…相手マジ何者なの…ストーカー気質の研究者っていうの…?これ…」

「ワリとそういうのって居ますよ。特定の実験体にやたらとご執心な研究者ド外道っていうのは」

 聞こえていたらしく、イツキが棘のある言葉を投げかけてきた。
 恐る恐るイツキの方を見ると、ドアの方を見ている。左目が髪で隠れている方をこちらに向けているので表情がよく見えない。

「気配は特にないです。…来たら言うので、どうぞ続けて?」

「アッハイ……」

 怖い。
 これは怖い。明らかにイツキの地雷を踏んでる。
 ともかく言われた通りに情報収集を続けた方が良さそうだ。零夜にも目配せして、察したのだろう、彼も机の方へ向かって行った。

 パソコンを開く前に一度深呼吸をする。
 息を吸って、吐いて。少し置いてからパソコンを開いた。

(…で、このやべぇストーカーメール送り付けてる奴って誰なのさ)

 名前を見ると「アハト」と表示されていた。
 本名なのか、それとも偽名なのかはわからない。…まあ、人体実験という社会的に結構アウトなやつをやってる研究者なのだろうし、本名ではないだろう、多分。

(研究者アハト、かな…?)

 メールボックスを閉じ、研究者名簿とかが無いかファイルを開いていく。
 目論見は当たり、該当のファイルを見つけられた。それを開くと、研究員達の情報が表示される。

「能力訓練……肉体改造……投薬実験……あった」

 ──アハト 薬学研究者

(薬学研究…だからヤケに投薬実験がどーのこーのとメールを送り付けてきたわけか。)

 一体どんな薬を作ったというのだろうか。そして同じ内容のメールをヒサメに何度も送り付けてくる辺り、何かあったのだろうか。普通、一度断ったらそれで終わるだろうに…。
 なのに諦めずに何度も…それこそヒサメから「投薬実験に参加する」という答えが出るまで送り続けていそうな感じだ。イツキが言うように、あの子にご執心な研究者とでもいうのだろうか…。


(まさか、ヒサメがこのアハトとかいう研究者と付き合ってたとか…!?)


 と、アホなことを思わず考えてしまったが、すぐに「いや、それはないか…」と自分で突っ込む。だって──

(人体実験が嫌悪対象なのに、それに参加している人間を好きになるとか難しいんじゃね…?ストックホルム症候群でも起こさない限りは…)
 
 そしてヒサメの周りにはある意味セコム的なヒーロー達が集まっている。その彼、彼女らにくっついているような子が、人体実験の研究者にくっつくとは到底思えない。

(ただ──…メール内容が若干親しいように見えたのが引っかかるな)

 実験対象に嫌われないように、先生と生徒の関係のようなモノでも作ったというのだろうか。
 …どちらにせよ、こんな毎日同じ内容のメールを送り付けてきた時点で恐怖対象に変わるだろう、さすがに。

「……ミコト、ちょっといいかな」

「ん?どしたの、れーや君」

 一人悶々と考えていると零夜に声を掛けられ、そちらに視線を向ける。引き出しを開けたままこちらに手招きしているのが見えた。

 開けたまま、ということは何か気になるものでも見つけたのかな…?

 
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