04 #THE END
「んでメールは…」
画面上のメールのアイコンをクリックする。これも難なく開いた。
受信ボックスを見ると、実験関連の連絡をよく受け取っていたらしいようなタイトルが並んでいた。
「うーわ…メールとかで実験の連絡貰うのかぁ…キッツいわねコレ…」
「それでも、実験の頻度は減ったらしいってあの子は言ってた」
机の中身を漁りながら零夜が答える。
成る程なぁ、と思いながらメールの受信履歴の日付を見て、違和感を覚えた。
「…本当に頻度減ったの?コレ」
「何……?」
引き出しを閉めて、零夜がこちらに寄ってきてパソコンを覗き込む。
「これが2週間前の日付でしょ?タイトルが『実験連絡』。同じヤツが毎日来てるんだけど…え、何コレ怖……」
「本当だ…。しかもこれ、差出人が全部同じだよ」
「…マ?よくある迷惑メールやスパムメールみたいなランダムなアドレスではなくて…?」
「そのようには見えないね。というかアドレスも同じだよ、コレ」
「こっっっわ!?余計に怖い!!!」
零夜に指摘されて改めて気付いた。確かに差出人は同じアドレスと名前になっている。
いや怖いわ…毎日実験連絡のメール入れてくるとか怖すぎない…?
「まさかひーちゃん、こういう連絡をすっぽかすタイプの子?」
「嫌々ながらも実験には行っていたと記憶してるけど」
「その後ちゃんとこちらに来ていたのかな…もしかしてトンズラしてたりして」
「……否定はあまり出来ない、かな」
「しないのか…」
けれど…普通、自分自身が実験に使われると聞いて、人並みの感性や感情を持ってるのなら逃げるという選択肢は出てくるのかもしれない。
「一応本文見ておこうか…そこから判断は十分出来るかな」
2週間分の差出人全部同じというのが妙に気になる。取り合えずその期間で一番古いやつを開いた。
──近々新薬の投薬実験を行う予定だ。朧 ヒサメ、君にも参加して欲しい。返事は明日の12時までに頼む。
…実験連絡、というワリには命令口調という程厳しくはなく、むしろ親しい人と話すような文章で書かれている。なんだろう、先生と生徒の会話のようにも思える。
それに対するヒサメの返信も見る。
──お断りします。
「おおう、ドストレートだね、ひーちゃん…」
この一文のみが返信されている。それに対しての返信は「了解した」と書かれているだけだ。
「それじゃぁ、その次の日は…?」
──近々新薬の投薬実験を行う予定だ。朧 ヒサメ、君にも参加して欲しい。返事は明日の12時までに頼む。
──お断りします。
──近々新薬の投薬実験を行う予定だ。朧 ヒサメ、君にも参加して欲しい。返事は明日の12時までに頼む。
──お断りします。
──近々新薬の投薬実験を行う予定だ。朧 ヒサメ、君にも参加して欲しい。返事は明日の12時までに頼む。
──お断りします。
──近々新薬の投薬実験を行う予定だ。朧 ヒサメ、君にも参加して欲しい。返事は明日の12時までに頼む。
──お断りします。
──近々新薬の投薬実験を行う予定だ。朧 ヒサメ、君にも参加して欲しい。返事は明日の12時までに頼む。
──お断りします。
………
……
「以下ほぼ同じ内容が毎日……って……」
「怖っ……」
思わず零夜と顔を見合わせた。
ヒサメの返し方も色々アレだけども相手も相手だなコレ…!?
そして毎日同じ内容のメールを送り続ける送信者も謎の執念を感じる。普通に怖いわ、これ。