04 #THE END
「っ~~…!」
声を上げそうになるが必死に耐える。自分の力で飛ぶのとは違い、浮遊感がやけに恐ろしく感じる。思わずイツキの服をギュッと掴んだ。
といっても、浮遊感はほんの数秒程度で。
トンッと軽い音を立てて着地した。多分、着地寸前に浮遊を使って音を立てないようにしたのだろう。
「着きましたよ」
「っはーーーー……」
思い切り溜め息を吐く。イツキから降りて、地面の感覚を確かめた。…うん、ちゃんと地に足付いてるね、よし。
零夜も既に来ていた。どうやら問題なく侵入出来たようだ。
『ん、問題なくは入れたっぽいね!』
「何ともなくてよかったわ……。で、何度か来たことがあるというれーや君や、私らが入った場所から近い建物ってなんのやつ?」
「確か…ホムンクルス達の宿舎だったはず。あの子の部屋も一応あったはずだよ」
成る程、宿舎か。
……待てよ?
「うーん、敢えてひーちゃんの部屋に行った方が安全かも…?」
ミイヤからは情報がありそうな所のマーキングは既に貰っている。直に行くより、敷地内からのハッキングで確かめるのもありかもしれない。それに何より…
「もしかしたら、ひーちゃんの部屋から何か見つかる可能性もゼロじゃないでしょ?」
コンパスの世界に持ち込みたくないという情報がここに眠っている可能性は十分あると言えるだろう。
そう説明すれば零夜も納得してくれた。
…若干イツキが不満そうだったので宥める。
「無差別に狙うのはダメだよいっつー。それに、ひーちゃん達ホムンクルスが無事でいられたのは研究者の中にも理解ある人がいたからなんだろうし、ね?」
「……わかりました」
すっごい渋々って感じでイツキも納得はしてくれたようだ。
**
宿舎の廊下の窓を、零夜が念を込めて鍵を開けるというファインプレーのおかげでこちらも正面から入るということを避けられた。
「いやー…サイキッカー便利だな…?」
念動力で物を操る、という芸当はサイキックも可能だったのは一応見たことがある。もちろんやっていたのを見たのはフユトやイツキのモノだが。
そういった能力の適正はそんなに高くなかったので少し憧れてしまう。
「そう?【僕】からしたら、【君】の能力も十分魅力的だと思うけど」
「…そう言われると照れるじゃんか」
他のメンバーと比べて、サポートに特化している所為でいつも悩んでいたが、こう真正面から言われると照れるものがある。
「…って、そんなことよりひーちゃんの部屋って何処?」
「確か……3階の端だったかな。」
「3階ってことは…階段を登る必要がありますね。…誰かに会うことが無ければいいのですが」
それは確かに言えてる。
階段でバッタリ誰かと遭遇して通報されたら困る。
ここまで誰にも遭遇しなかった分、そこが怖い。
「いてもここはホムンクルス達がほとんどだよ。研究員や部外者が入ってくることはあまりないからね」
「んぇ、そうなの…?」
「ここにも何度かは来ているからね。ホムンクルス達も部屋から積極的に出ることは多くない。」
確か以前に聞いた、ヒサメ達ホムンクルスの実験内容が「元々持っている能力」を強制的に引き出したりする物が多く、体力等を消費しやすいと言っていた。
恐らく、そこで消費した体力を回復する為に休むことがほとんどなのだろう。
だとするのなら、外に出ないという理由がなんとなくわかる。
「でも一応、用心しておきましょう。」
「イツキの言う通りだ。用心するに越したことはないだろうね」