03 試練は交錯する


「そういえば、エイワズに乗ってる時は問題ないんだね?」

「問題ないよ」

「…この際、エイワズに乗って移動してもらうしかないのでは」

「いっつー、そ れ だ」

 二人のやり取りを聞いていて、また観戦した試合を思い出す。
 …確かに、エイワズで乗り回している時は特に息を整えるという様子は一切なかった。
 ただ問題点と言えば、スプリンターというロール故のスピードの速さだろうか。他のロールのヒーローと比べて、足が速いというのが最大の特徴だ。
 多分追いつこうと思えば出来なくはないけれど、それをやったら今度はこちらが息切れを起こしそうだ。

「……速度は一応落とすよ」

「アッ…なんかごめんね」

 恐らく表情にでも出ていたのだろうか、そう言われてしまった。うん…なんか申し訳ない。

「それともボクが背負います?」

「時々乱暴になったりするのでやめた方がいいと思う」

 即答して却下した。
 まぁ…そうして貰ったのが緊急時、ということもあってイツキに担がれたとかいうことは過去に何度かある。しかしイツキも容赦なく動き回るので酔う。多分コレ男女関係なくやるやつだな、と思う程だ。

 何気にえげつない程のスピードで回避したり飛んだり走ったりしてたな、と思い返してゾッとする。おおう、ちょっとブルッって来た。

「……一体何をしたの、【君】」

 そんな私の表情を見て零夜が訝し気にイツキを見る。
 当の本人はわかっていないのか、キョトンとしていた。

「うーん……なんででしょう?」

 本当にわかってなかったーーーーー!!!!

『オイ、茶番はいいからとっとと調査を続けろや』

「そしてナガミミ様も容赦ぬぇーーーー!!!」

 私一人のツッコミの叫びが樹海の中にこだました。

 ***

 …さらに数十分後

(スピードを落として動く、とは言ってたけど本当に実行出来たとは…。)

 ただバランスがいつも以上に取り辛いのだろう、時々乗り直している姿が見えた。
 …それはさて置き、別の違和感に気付く。

「ねぇナガミミ様、こんだけ探索してるのに何でマモノの一匹も出てこないの?」

 本当だったら何戦かやっていてもおかしくないくらいの時間を探索というチェックをしている。
 なのに、未だにマモノとの遭遇がないのが引っかかった。まぁ、おかげでチェックしやすいからいいんだけども…。

『そりゃぁ、わざと制御してるからだ。まずは周辺のマップの確認。すり抜けが出来たり、変な風に見えない壁が出ていたりしないかを確かめるのに逐一マモノと遭遇してたら効率が悪いだろ?』

「それはまぁ…確かに」

 ナガミミの言う通り、確かに一理ある。
 それに、下手な思い込みでもやらかして、確認漏れとかが起きる可能性もありそうだ。

 
 
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