03 試練は交錯する
「それは賢明な判断だと思うよ、ナガミミ、ジュリエッタ。」
『混乱状態だけでも結構調整が難しいのに、その上位互換の状態異常をバラ撒くというその敵が恐ろしいわね。…いろいろな意味で』
「あはは、違いないね~」
『オイオイ、無駄話はそこまでにして、とっとと始めるぞ。──テメェら、準備はいいか?』
問題ないと3人それぞれが返事をすると、白い世界が崩れていく。
そして──
*
──渋谷/繁花樹海
木々と植物に呑まれた、渋谷が眼前に現れた。
「おぁー…!なっっつかし。2020年とかの異界化した渋谷はこんな感じだったもんなー。ね、いっつー」
「ですね。木の上の道を歩いたりとかもやってましたね。」
以前の世界で、ムラクモ13班として活動していた時の記憶が蘇る。
悲しく、辛い記憶だけではない。楽しいものや嬉しかった記憶も、思い出せる。
…っと、感傷に浸っている場合じゃないな。ジュリエッタに無茶振りやらせてるんだし、それに対応出来るように確認をしなければ。
「よーっし、そんじゃ行きますかー…ってアレ?れーや君?」
ダンジョンが現れてからずっと黙っていると思ったら、周囲の建物をずっと見上げていたようだ。
何度か軽く呼びかけてみるが反応がない。おーい、と言いながら目の前で手を振ると漸く気が付いた。
「…あ、すまない。」
「どうかした?もしや、早速VR酔いとか…?」
「体調は問題ないよ。ただ……見知った街がこんな風になるなんて、と思ってただけさ」
成る程、私達にはこれが「懐かしい」と感じる方が強いが、そうか。
…こんな風に異界化するなんて、と思う方が正しいっちゃ正しいのかもしれないな、と思うと、自分の異常性に少しだけ悲しくも思えた。
「あー……。もしかして思い入れとかあったりする?」
「…半々ってところかな。」
「おおう、それはまた……」
「でも…もう平気だよ。ホラ、確認作業をするんだろう?」
「とと、そうだった…。よし、じゃぁ気を取り直していくよー!」
零夜に言われ、改めて確認作業を開始した。
……数十分後
「うん、確かにマップの確認作業はするとは言ったけどさあ……まさかれーや君、走るとすぐに息切れ起こすとは」
「あまり体力がないという理由を察しましたね」
成る程、これが病弱っぽい部分なのだろう、と納得していた。
いや良くないんだよなぁ…!!まさか走っただけで息切れを起こしてしまうなんて思わんやん…?代わりに歩く分には問題なかった。でもそんなペースだと確認作業が絶対終わらなくなるやつだ…。
「……悪かったね、体力少なくて。でもさ、別に気にしなくてもいいんだよ?息を整えれば問題はないんだから」
「見てる側がクッソ心配になるんだよなぁ~~~」
若干拗ねたような態度をしている零夜。…そういえば、何度か観戦した試合でも時々そういう動きをしている事はあったなとぼんやり思い出した。