03 試練は交錯する
ナガミミの一言で思わず固まってしまった。
いや、だってまだ何も言ってないのに何故わかったし感がですね!?
「…驚いた。よくわかったね」
さすがの零夜も少し驚いていたらしい。…表情はそんなに変わっていないようにみえたけど。
「まぁな。……書き換えられた影響か、同じ様に『書き換えられた人間』と『そうでない人間』というのが薄っすらわかるんだ。特にミコトとイツキ、テメェらみたいな特殊なヤツらは半々って感じだ」
「なにそれ初耳」
「今言ったからな。でもテメェからはそれらを一切感じなかった。だからそう思ったんだよ」
思わぬ初耳情報に驚いたけど、成る程そういう……。
「さっすがナガミミ様、元地球外生命体なだけはあるわ」
「テメェそれ褒めてんのか?」
「褒めてる褒めてる」
「ケッ…物は言いようだな。…で、結局ソイツは誰なんだよ」
腕を組みながらナガミミが零夜を見た。
…若干ナガミミが警戒しているように見えるのは気の所為なのかな…?
「【僕】は零夜。お察しの通り、こことは別の世界線から来たんだ。」
「オレはナガミミ様だ。ノーデンスの社員をしてる。にしても…別の世界線、ねぇ。テメェの場合、異世界線とも言えるんじゃねぇか?」
「そうかもしれないね。」
「…で、改めてジュリエッタの所に案内するけどよ、何が目的で来たんだ?テメェら」
「あーー…アレを使いたいってことで」
アレ、とぼかして言ってみる。ナガミミは「アレって何だよハッキリ言え」と言いかけたが、何かを察したのだろう。
みるみるうちに表情が固まっていく。
「ウッソだろテメェら……本気か…?」
どうやら伝わったみたいだ。
アレ──超小規模時空間転移装置…タイムマシン【ポータル】を使いたい、と。
◇
「タイムマシンを使いたい、ですって…!?まだまだ調整中なのよ!?」
…と、いざドストレートにノーデンス社のイケオネエ社長・ジュリエッタに言ってみればこのように返されてしまったのである。
いやあ手厳しい。
「んーまあ、ミイヤも調整とかもたまにやってるじゃん?だからワンチャン…ですね?別に
「…一応聞くけどどれくらいなのよ」
「ざっと80年前ですかねー!そこからさらに日付指定とかも出来ればやって欲しいって感じですかね!」
「80年前…つまり西暦2020年?その頃災害があって、その時代に生きてる“その時代のアナタ達”が居るんじゃなかったかしら」
「だねー。さらに注文があるんだけど大丈夫ー?」
可能な限りの交渉。多分ジュリエッタには無茶振りさせる形になるのだろうとは思うけど、ワンチャンあるんでない…?という感じで彼を見る。
「あぁもう、アタシはアナタ達と違って以前の記憶が無いのよ!あまり無茶振りさせないで頂戴!言われたからにはやるけど!」
「あ、やるんだ」
意外だなぁというように呑気にイツキがそう言う。
…うん、多分ジュリエッタの技術者魂でも刺激出来たんじゃないかな…。