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01 遭遇


 ………

 ……

 世界線に飛ぶ前のことを回想していた。
 夢を見る代わりに、思い出していた。或いは、夢として回想していたのだろうか。

(……ここは何処なんだろう)

 見覚えの無い天井。そして部屋。
 …部屋にしては、机と【僕】が寝ていたベッド以外何もないという、あまりにも殺風景だ。

 身を起こすと、自分の眠っていたベッド周辺を境界に何やらバリアのような膜が貼られていた。

「これは…」

「異能殺しの結界。無理にでも使おうとすると全身に激痛を与えるようになってる。試しにイツキがやって見事にのた打ち回ったから、やめた方がいいよ」

 聞いたことのない少女の声。
 声がした方を見れば淡い緑の髪をサイドテールでまとめた少女が立っていた。

「初めまして、パラレルレイヤーさん。アタシは…そうだな、“観測者”のような者。3.8或いはミイヤ、と呼んでもいいよ」

 ニヤリという感じの笑みを浮かべながら少女…ミイヤは自己紹介をする。
 …どうやら彼女には既に【僕】を知っているような言い方をしている。

「そう。…【僕】の自己紹介はいるかい?」

「一応。念の為にはね?」

「わかった。【僕】は零夜。…それでミイヤ、【君】はどうして【僕】をこんなところに?」

 異能殺しの結界、というのは本当なのだろう。チャネリングも【我々】との「繋がり」も絶たれている。無理に繋げようとすれば…多分身体が持たない気がする。忠告通り、抵抗は諦めた方がよさそうだ。

「イツキとミコトが君を連れて帰ってきたから。一応君らの戦いは視てたよ~。──最初からね」

 どうやら彼女もイツキ達と同じ側の人らしい。それなら納得だ、仲間を一度人質にするような輩を無防備に放置せず、対策を立ててこうしているというのなら。
 目を細めながら「最初から」と言われた時、全てを見透かしているぞ、という風にも言っているような気がした。

「つまり、わざと【僕】が彼らをあの路地裏に誘っていたことも?」

「まぁねー。ただ、マモノが襲ってきたのは予想外だったでしょ?この世界こういうことがちょいちょい起きるんだ~。ま、“前の世界”程じゃなくなったけどね」

「たまに聞く“前の世界”ってなんなんだい?」

「あー…。何と言うべきなんだろう。文字通りこの宇宙の在り方を書き換えたっていう大それた出来事があったんだわ。その書き換わる前の世界は…ある意味そのままだと悲惨な結末しか生み出さない、そんな状態だったからね。」

 ま、もう終わった話だから!と言って手をパンッとミイヤは合わせた。

「それはさて置き、どうしてこんな事をしたのか話して貰おうかな?零夜クン」

 遭遇と敗北




 これは敗者故の末路なのだろうか。


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