01 遭遇
2週間。
ヒサメを助けることを協力したい、と言って既にそれだけの時間が経過した。
何度かあちらの世界にも行ったが、今一つこれといったモノが掴めず。
気分転換と称してこの時代に来ていたんだけれども……。
「まさか、ひーちゃんに何かあった…?」
「………」
零夜は答えない。
「ねぇ零夜、答えて」
表情を変えない。
先程まで、ああしてマモノと戦っていたのに、どうして。
何があったの、と聞きながら一歩踏み出した。
次の瞬間、ぐるりと視界が回る。腕が拘束される。何、と思って動こうとすれば、顔の横にバチリ、とプラズマが寄せられる。
いやいやいやナニコレ怖いんですけど!?
改めて自分に置かれた状況を理解した。零夜に拘束されてる、というか、人質にされてますねコレ。
オワーオ、これは不覚…。
「動くな」
イツキが得物を構えようとした体勢のまま、動きを止める。彼の目からはスッと零夜を見据えている。…その気になれば、襲い掛かるつもりだ、この元兵器野郎……!
零夜に人質にされている以上に恐怖を感じる。こういう時のイツキってマジで怖い。うわーどうにかしないと本気で殺しかねない……。
「何のつもり?」
得物を構えたまま、イツキが問いかける。
「見ての通りだよ、彼女は人質。…以前、コンパスの世界に来て暴れたことがあったよね。その記録を見て思ったんだ。イツキ、【君】をまともに相手にしたらいけない、と」
「…その判断は正しいでしょうね。2020年の頃のボクは13班の暴れ者でしたから。だから、比較的無力そうなミコトを人質にした、と?」
零夜は答えない。だがその無言は肯定の意味なのだろう。
…というか無力そうって心外な。いやまあ確かにイツキやナナセ達と比べたら全然無力なのは否定出来ないけども!!
「条件は何でしょう、MMMの首脳さん」
静かに怒っているのだろう、イツキが零夜の名前を呼ばなくなった。
その言葉に肩がピクリと揺れたが、拘束は緩んだ気はしない。いざ抵抗しようとすると、意外と強い力で返される。
うーん、服装の効果もあって手足細そうな青年という感じだったけど、いざこうされるとちゃんとした男なんだなぁと…なんとなく一人で納得していた。
「【君】達の本来の世界線へ連れて行って欲しい。」
「………何故?」
「わからないの?あの子を助ける為に、だよ」
「っ…でもなんで2100年?あそこにあるのはセブンスエンカウントと、開発途中になってる状態のタイムマシン……あ」
考えていたことを口にして、そのまま気付いた。
タイムマシン。
“前の世界”では確かにそれは利用され、何度も使っていた。
書き換えられた「今の世界」では、開発途中になってしまったが完成間近、というところにまで来てはいる。
まさか、狙いはタイムマシン……?